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1999年7月〜9月の特許的ショート・ニュースと噂とヨタ話と...
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走り書き程度で正式公開するには内容が不十分と思えるのですが、速報性等を考えて試験的にアップします。御意見を頂ければ幸いです。年表の作成を基本に始めたので、事件の日付順に列挙しています。ですから更新箇所はランダムです。
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(※完全に個人的な覚え書きです。裏を取ってないものや、他言無用の未確認情報故、内容は保証致しませんのであしからず)
 
更新:2002/01/24 
 
最近のひとりごと 2000年以降の戯れ言
1999年10月〜12月のひとりごと 1999年10月〜12月のたわごと
1999年7月〜9月のひとりごと 1999年7月〜9月のたわごと
 
1999年前半のひとりごと 1999年1月〜6月のたわごと

1998年のひとりごと 1998年のたわごと

IPニュース 1999年の最新ニュース


1999/09/30 (打ち止め)
 
1. CAFC判事にリチャード・リン氏を指名(ちょい追加)
 IPOニュースより。
 9月28日、クリントン大統領は先頃逝去されたジャイルズ・S・リッチ判事(Giles S. Rich.)に代わるCAFC判事として、リチャード・リン氏(Richard Linn)を正式に指名した。同氏は元米特許庁審査官、法律事務所のパートナーなどを経て、現在はフォーリー&ラードナー法律事務所(Foley & Larder)のパートナーを務めている。
 BNA's PTCJによれば、リン氏の就任には上院の承認が必要。しかし、上院はティモシー・ダイク氏(Timothy B. Dyk、アーチャー元主席判事のシニア入りによる欠員の候補として今年1月指名された)の指名も未だ承認していない。
 
情報元:
・IPOデイリーニュース(1999年9月29日)
http://www.ipo.org/whatsnew.html
http://member.nifty.ne.jp/sivuch/index.html
 
 
2. 弁護士法特例規定、知的財産権法もOK
 朝日新聞より。
 日本の弁護士法には特例規定があるそうで、司法試験に合格しなくとも一定の大学や大学院で「法律学」の教授等5年以上勤めた専門家は、弁護士になれるらしい。この特例に基づいて、知的財産権法の香川大学法学部元教授が弁護士登録を申請したところ、日本弁護士連合会に拒絶されたため、これを不服として争われていた裁判で、東京高裁は訴えを認めて決定を取り消す判決を言い渡したとのことである。
 「知的財産権法の分野も弁護士法の特例規定に基づく法律学と認められ、拒絶決定は裁量権の逸脱で違法」とのこと。知財重視(というか特別視しないということか?)の流れとして、素直に喜ぶべきでしょうか。
 
関連情報:
・「知的財産権法専門でも弁護士への転身OK 東京高裁」asahi.com news update(1999年9月30日)
http://iij.asahi.com/0930/news/national30036.html
 
 
3. 会計年度の終わり
 日本では、今日もまた巨人が負けて中日が勝ち、今年も終わったかな...と。
 アメリカでは、会計年度が10月から始まるため、今日9月末日が節目となる。来週からは最高裁は活動を開始し、連邦議会は休会にはいるため、国会議員達は自分の家に帰る。ということは...特許法改正、またしても今期成立せずか?!頑張れ阪神...(小声)
 
 
1999/09/29
 
1. ヒトの遺伝子6000個を特許出願
 読売新聞一面他。遺伝子の特許出願については議論があり、機能の判明しない断片については特許化しない方針のようだが、今回日本の「ヘリックス研究所」が人間の遺伝子の内約6000個につき出願中であることが明らかになった。
 
関連情報:
・「ヒト遺伝子6000個特許出願」読売新聞(1999年9月29日)
・「ヒトの遺伝子6千個、特許出願=新薬開発などに応用−千葉の研究所」エキサイトジャパン(時事通信社)(1999年9月29日)
http://www.excite.co.jp/news/searched_story/?nd=19990929161900&nc=X065
・「ヘリックス研、ヒト全鎖長cDNA6050個を特許出願」日経バイオテク(1999年9月29日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/medi/83245
 
 
2. ソフトをレンタルする方法の特許?
 ZDネット、インターネットニュースより。アイ・エス・エス・ジャパン社がソフトをオンラインでレンタルする業務を開始したとのこと。同社代表の増井雄一郎氏が取得した「コンピュータソフトレンタル方法」の特許に基づくサービスとのことだが、、、
 特許庁のデータベースによれば、株式会社ランドシステムの増井千代一氏による「高額コンピュータソフトレンタル方法」という特許出願の公開公報が見つかった(特開平6-230847号)。これのことを指しているのか?200万〜500万円のソフトと明細書には書いてあるが。
 
関連情報:
・中野恵美子「日本初のソフト・レンタルサービス『Internet Soft Serve』を開始」ZDNet/JAPAN(1999年9月27日)
http://www.zdnet.co.jp/internet/news/9909/27/news02.html
・高額コンピュータソフトレンタル方法
http://www2.ipdl.jpo-miti.go.jp/journal/detail.cgi?F_BASIC&938614646&1&94230847
 
 
1999/09/28
 
1. コピーガード除去装置は違法に
 日経エレクトロニクスより。
 ビデオソフト等のコピーを防ぐため、コピーすると画面が乱れるコピーガード信号(マクロビジョンなど)を入れたソフトから、この信号を除去してコピー可能にする装置、いわゆる「コピー・ガード・キャンセラー」の販売を禁止する法律が日本で既に成立している。第145回国会で成立し1999年6月23日に公布された「著作権法の一部を改正する法律」がそれ。この法律は基本的に2000年1月1日施行だが、「コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制」と「権利管理情報の改変等の規制」については1999年10月1日に前倒しで施行されるとのこと。
 現在採用されているコピーガードとして有名なものは、例えばMDが採用するSCMS(serial copy management system)方式、DV方式やD-VHS方式等が採用するCGMS(copy generation management system)方式といった最新の規格の他、古くからビデオソフトに使用されてきたマクロビジョン方式(何種類かあり、洋画によく使用されていた)、国産の松竹方式等がある。これらの信号を除去できる装置が、通販(ラジオライフの公告とか)や日本橋でんでんタウン店頭等で販売されていた。法施行前に「最後の」駆け込み販売をしているらしい。
 しかし、私的な使用の場合でもコピーガード信号を除くと法律違反になる。つまり来月になれば装置の販売だけでなく、装置を買った人がこれを自宅で使うだけでも法律違反ということになる(但しこの場合は刑事罰の対象外とのこと)。
 通常、違反した場合は刑事罰の対象となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる。しかも非親告罪。違反の形態に「プログラムをWWWサーバやFTPサーバなどに格納して公衆に送信、もしくは公衆に送信できるような状況を作る」というのがあり、いかにも現代的。
 ちなみに米国では、既に成立した「デジタルミレニアム著作権法」により同様の規制がある。
 
関連情報:
・原田衛「知的財産権:改正著作権法の施行迫る,コピー・ガード・キャンセラの一般への販売は刑事罰に」Nikkei Electronics Digital Contents Distribution(1999年9月27日)
(「...『著作権法の一部を改正する法律』では、たとえ私的に使う目的でもコピー・ガード・キャンセラを使って技術的保護手段を避けてコピーすると、著作権の侵害になることを明記した。ただし、これについては今のところ刑事罰は適用されない。」)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-contents/1999/990927cancel.html
・「著作権法の一部を改正する法律」平成11年 6月23日付官報(号外第118号)
http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo/jun.4/g10623t0004.html
(初めて日本の官報をオンラインで見た。縦書きなので思わず感動。でもイメージデータなので重いし不便。アメリカのようにテキストデータ版、PDF版も欲しい。)
 
 
2. レンキスト・コート再開/州の免責は???
 FindLaw LEGAL GROUNDSより、ロサンゼルス・タイムズの記事紹介。
 来週、連邦最高裁が審理再開。4人の保守派とともに多数派を構成する裁判長レンクイスト判事(Chief Justice William H. Rehnquist)。州権復活の動向について、どうなるのか非常に気になるところ。
 特許権や商標権、著作権等に関し、これらの連邦法違反で州政府やこれらの機関を連邦裁判所に訴えることはできないと、前会期の最後で最高裁は判決を下している。
 これに関連して、最近カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所は、州が特許権を取得したことにより免責特権の放棄とされることがあると判決している。地裁判決ではあるが、非常に興味深い。最高裁の決定に反しているようにも見えるし、控訴審に注目が集まる。以下、この事件をPTCJより簡単に紹介。
(※地裁判決ですので、そこのところをご了承下さい。)
 この事件、カリフォルニア大(またか!)の有する特許につき、特許無効の宣言を求める確認判決をニュー・スター・レーザー社が提起した。これに対しカ大は、憲法修正11条に基づき州の免責を主張して、確認訴訟の却下を申し立てた。地裁は特許救済法(州を特許訴訟の被告とできるとした法律で、先般のカレッジ・セービングス・バンク事件により憲法違反とされた)の解釈につき、特許権取得の条件として州は免責特権を放棄すると解釈して、確認訴訟の却下申立を退けた。
 問題となる州の免責は合衆国憲法修正11条に規定されている。これは、州を被告として提起された訴訟に関する連邦裁判所の裁判管轄(subject matter jurisdiction )を制限している(この条項は、連邦法、州法に関する裁判や、州籍の相違(diversity)に基づく裁判にも適用される)。
 連邦議会は、特許法や商標法、著作権法について、この免責を無効にすべく、州も被告となることを明記した保護明確化法をそれぞれ制定した。修正11条を無効にする権限は、例えば修正14条のエンフォースメント条項(enforcement clause of the 14th Amendment)を根拠にすれば憲法上認められることになる。一方、憲法1条に基づいて州免責を無効にする権限は、連邦議会にないとされている(セミノール事件)。
 従前のカレッジ・セービングス・バンク事件では、保護明確化法が修正14条に適法に基づいていないとして憲法違反とされた。商標法については、「虚偽・誤認を生じる宣伝行為」から保護される権利は、修正14条で保護されるべき財産権的利益にあたらないとされた。また特許法については、特許権は財産であるが、州免責の破棄を正当化するために必要な、州による具体的な侵害行為についての十分な事実認定がなされていないとして、無効とされた。つまり、これらの法律は立法根拠を欠き憲法違反であるとされたのである。
 しかしながら、これらの法律に関わらず、州が主権免責を放棄した場合には訴追可能である。今回地裁はこの点を突いている。最高裁は、単に州際通商に州が従事したことのみで、免責特権を「法上放棄した("constructive waiver")」ことにはならないとしている。しかし、地裁は「通常のビジネス活動以上のことに従事する州は、(民間の)競業者に対し事実上の驚異を与える。連邦裁判所での完全な免責である。外国勢に与えられたそれよりももっと強力な特権である。("a state engaging in more than ordinary business activities enjoys a substantial edge over its competitors: total immunity from suit in federal court, an immunity even more impenetrable than that afforded to foreign powers.")」としている。
 さらに最高裁はカレッジ・セービングス事件で、州が単に「通常であれば合法行為」に従事しているだけでなく、連邦政府が法に従い留保している可能性のある「贈り物("gift or gratuity")」もしくは「連邦法上の恩恵("federal beneficence")」を受けている場合は、連邦政府は放棄を強制することができるとしている。従前の他の判決でも、最高裁は連邦議会に対し、州際契約を認可する条件として、あるいは連邦基金を受ける条件として、州に対し免責の放棄を要求できるとしている。
 これらに鑑み、カ大が特許権を保有していることに地裁は注目した。特許権は著作権などと違って自動的に発生する性質のものでなく、特許庁での登録が必要である。また、連邦裁判所において権利を行使できるものであって、仮に政府によるエンフォースメントがなければ特許の価値は極めて小さなものである。このような状況を考えるに、州は特許権取得と引き替えに無効確認訴訟から免除される特権を放棄したと地裁は判断したのであった。
 PTCJのコメントにもあるとおり、特許保護明確化法(大仰な名称だが、実は侵害に関する特許法(271条関連)をちょっと変更・追加したのみ)では、被告として「...侵害した者は誰でも」と従来規定されていたのを、「誰でも」には「州」も含まれると追加したにすぎない。「州は修正11条の免責特権を放棄することを条件としてのみ特許を得ることができる」旨はどこにも書かれていない。今回、同法を強制的放棄("forced waiver")と解釈した地裁の判断がどうなるか、今後に注目。
 PTCJのコメントには、他にもカレッジ・セービングス事件でのスカリア最高裁判事の判決理由について言及している。州が連邦制度からの見返りを受ける代わりに免責放棄を強要するという件に関し、保護明確化法は褒美を与えないことで(プラス面で)州を脅しているのでなく、(通常であれば許される行為を州に対し禁止するというマイナス面での)制裁を加えることで州を脅す規定であるという。同判事はこの誘因が、圧力が強制に変わる点が生じることに関して威圧的になり得ると見ているようである。
 
関連情報:
・"Evolving Standards of Jurisprudence: Rehnquist Court 'Back to the Future'." Los Angeles Times (September 27, 1999).
http://www.latimes.com/HOME/NEWS/NATION/topstory.html
(LAタイムズは当日の記事しか無料で読めない。)
New Star Lasers Inc. v. Regents of the University of California, No. Civ. S-99-428 WBS/PAN (E.D. Calif. 8/27/1999).
・"State University Waived Immunity From Suit to Declare Patent Invalid.", 58 Pat. Trademark & Copyright J. 595 (September 23, 1999).
Petty v. Tennessee-Missouri Bridge Commission, 359 U.S. 275 (1959).
South Dakota v. Dole, 483 U.S. 203 (1987).
 
 
1999/09/25
 
1. e-oneの色違いは本当に大丈夫なのか?(さらに追加)
 ZDNNより。先日、不正競争防止法違反で販売差し止めの仮処分が認められたiMac類似パソコン、e-one。販売元のソーテックは、仮処分に係るモデルと色違いのe-oneを発売すると発表していた。これって、大丈夫なのか?と思っていたら、この記事が出た。当然の疑問だと思う。裁判所の理由付けをみると、色以外に形状についても重視しているように見受けられる。形状というか形態というか、スタイルと言うべきか、とにかく色を変えるだけで片付く問題とは思い難い。ソーテックの商売上の判断の真意は定かではないが(売れ筋パソコンでバックオーダーも捌ききれていない状況ではやむを得ないのかも)、法律的に見れば危ない橋を渡っているなーという個人的感想。少なくとも、アップルが色違いe-oneについても仮処分を求めれば、認められる可能性はありそうだ。
 ...と思ったが、写真を見ると銀色一色になっている。ツートンカラーでなければ、半透明のスケルトン仕様でもない、かなり違った印象になってしまった。次の疑問:これを消費者は欲しがるか?考えてみれば難しい判断だろう。iMac風にすれば裁判、デザインを違えると消費者にそっぽを向かれる。結局はiMac効果に少なからず便乗していると考えられる?(だから仮処分を認められて然るべき)ことになるのか...(ひとりごとですので、そこのところよろしく)もっとも、もしこのデザインでも売れれば、消費者はデザインのみならずスペックを(より)重視したと捉えることもできる。それよりも、iMac風でない独自のデザインで、売れるデザインをソーテックが創作して新たなトレンドを生む、そしてこれを知的所有権で保護する、というのが目指すべき理想論かと。
 
関連情報:
・芹澤隆徳「ソーテックはソリッドカラーのe-oneを出荷できるのか?」ZDNet/JAPAN(1999年9月24日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/24/e-one.html
・松沢敬介「銀色に変えたe-one発表 ソーテック」毎日インタラクティブ・コンピューティング(1999年9月28日)
(銀色(ミレニアムブルーと呼ぶらしい)e-one 500の写真あり)
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/28/1.html
・松沢敬介「ソーテック、異議申し立て申請へ e-one問題で」毎日インタラクティブ・コンピューティング(1999年9月28日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/28/2.html
・松沢敬介「『全面的な法廷闘争へ』 ソーテック社長会見要旨」毎日インタラクティブ・コンピューティング(1999年9月28日)
(ソーテックの大辺創一社長との質疑応答。裁判所命令への異議申立も準備中らしい。半透明でない銀色ボディに変更したことについてもコメント。
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−−色が変わっただけのようだ。これで裁判などは乗りきれるのか
大辺社長
色を変えたからどうこうとは考えていない。e-oneはウインドウズマシン。10万円以上を支払う消費者がOSの違いを含めて誤認するかどうか。パソコンを買う際は、知人などに話を聞き、カタログを見ながら購入するパソコンを選択する。数千円ならわかるが、10万円を超す製品を消費者が間違えるかどうか、という点で異議がある。デザインは特許事務所を通して特許庁に意匠申請を行った。係争中のものは申請が迅速におりる可能性があり、特許事務所を通して受理を早めてもらいたいとの要望も出している。(←私見:誤認混同については一理ある。しかし意匠登録うんぬんは無関係では。)
 
...決定書を見た限りでは半透明で青と白のデザインが誤認を与えると書かれている。アップルへの配慮でいけば半透明をやめて、もともと考えていたノンスケルトン一体型を出したことで仮処分決定に抵触しないと考える。弁護士とも相談の上で決めた。
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/28/3.html
・枝洋樹,畑陽一郎「ソーテック、銀色のe-oneを発売 青色を捨て、仮処分の矛先かわす」日経エレクトロニクスDigital Consumer Electronics(1999年9月28日)
(旧e-one 433と新e-one 500の写真あり)
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...不正競争法に詳しい小島国際法律事務所弁護士の桐原和典氏は、「半透明の青と白という点を銀色に変えることで、e-oneの新機種は仮処分の対象から除外される公算が高い」という。
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-ce/1999/990928eone1.html
 
 
1999/09/24
 
1. リットン対ハネウェル事件は均等論非侵害
 CAFCから最高裁に上告され、その係属中にワーナージェンキンソン最高裁判決があったため最高裁からCAFC差し戻しになり、さらにCAFCから地裁差し戻しになったこの事件、カリフォルニア州中部地区連邦地裁で差し戻し審の判決が9月23日に下された。どうやら被告ハネウェル社の非侵害が認定された模様。従前のCAFC判決から想像するに、原告リットン社の特許は審査経過禁反言により均等論侵害を制限されたのだろう。
(同事件では、リットン社が提出したIDS文献について最終的に権利請求を放棄したと判断されたため、イ号が放棄事項の些細な変更にあたるかどうか、要するに放棄された技術的範囲にイ号が含まれるかどうかを地裁で審理し直すことになっていた。
 なおIDS文献により禁反言が認められた例としては、過去にエクシャン対ホーム・デポ事件等があった。)
 しかしながら、ハネウェル社はジャイロスコープ市場における反トラスト法違反(antitrust violations)を認定されたため、ハネウェル社は依然としてリットン社に対し損害賠償を支払わなければならない。昨年の陪審評決では、7億5000万ドルとされていたが、今回は6億6000万ドルに減額された。(一時は12億ドルと裁定されていた。)
 ハネウェル社は控訴を表明。訴訟は続く。。。
 
関連情報:
・"Honeywell court judgment to Litton reduced" FindLaw Legal News (Reuters), MINNEAPOLIS (Sept 24, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/scripts/legalnews.pl?nofr=y&L=Intellectual_Property&R=/news/19990924/n24383413.html
Litton Systems, Inc. v. Honeywell, Inc., 140 F.3d 1449, 46 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ipo.org/LITTONv.HoneyWELL.html
Ekchian v. Home Depot Inc., 104 F.3d 1299, 41 USPQ2d 1364 (Fed. Cir. 1997).
http://www.ipo.org/HomeDepot.htm
 この事件において、ローリー判事は「初めて、IDSにおいてなされた言及を、裁判所が特許されたクレームの範囲を解釈するための根拠とすることができる」と判示している。
「IDSは審査官、裁判所、一般公衆が依拠することのできる審査記録の一部である。...このため、IDS中に含まれる主張で発明と先行技術を区別しているものは、最終的に特許を認められた権利範囲に影響を及ぼし得る。」
"Ekchian ... states the issue to be one of first impression, that an Information Disclosure Statement ("IDS") cannot be the basis for an estoppel because it is not submitted to the Patent Office in order to overcome a rejection by the examiner. We do not agree with this argument. An IDS is part of the prosecution history on which the examiner, the courts, and the public are entitled to rely. Ekchian distinguished his invention from the submitted prior art as a kind of preemptive strike against a potential rejection. He intended his statement to be relied on. It is reasonable to infer, absent an indication to the contrary, that an examiner will consider an IDS when determining whether to allow the claims; the courts and the public may rely on it as well. An argument contained in an IDS which purports to distinguish an invention from the prior art thus may affect the scope of the patent ultimately granted. Accordingly, we first hold that statements made in an IDS can be the basis for a court to interpret the scope of the claims of a granted patent. See Standard Oil Co. v. American Cyanamid Co., 774 F.2d 448, 452, 227 USPQ 293, 296 (Fed. Cir. 1985) (stating that the prosecution history, which includes "all express representations made by or on behalf of the applicant to the examiner to induce a patent grant," limits the interpretation of the claims "so as to exclude any interpretation that may have been disclaimed or disavowed during prosecution in order to obtain claim allowance."
・"A 10-Year Legal War Steams On" Law News Network's Intellectual Property Law Center (Oct. 5, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/A7071-1999Oct5.html
 
 
2. 仮出願で警告?
 日経ビズテクより。
 ウェブ関連技術の特許が問題になることは珍しくない。今回は広告収入で運営する無料インターネット・サービスdotNow!を創設したAsoftware社が、広告運営の無料インターネットというサービスの形態そのもの(!)について米国他で特許を申請中。同種のサービスを提供している他社に対し同社の特許に抵触するおそれがあるとして警告しているらしい。
 よく分からないのは、「この特許はまだ正式に成立してはいないが、昨年US特許局から暫定特許(Provisional Patent)を取得している」というくだり。「プロビジョナル」といえば、通常は「仮出願(PROVISIONAL APPLICATION)」のことを指すはずだが、、、まさか未だ出願中で成立していない特許について警告を発するとは考えにくい。既に特許許可は下りているが、特許証が発行されていないという意味なのか?
 
関連情報:
・「USNews 広告収入で運営する無料インターネットの手法、特許侵害の可能性?」Nikkei BizIT(1999年9月24日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/prom/82812
 
 
1999/09/23
 
1. 特許報酬制度
 日経エレクトロニクスより。同誌と米Electronic Engineering Times紙の共同による日米電子技術者を対象にした調査報告。日本の多くの技術者は特許報酬金が少ないと不満をもっているとのこと。当然の不満でしょう。技術者のやる気を鼓舞するような、労力に見合った報酬が得られるような制度の見直しを。
 
関連情報:
・田中正晴「特許報酬制度の現実 日米電子技術者の意識調査」日経エレクトロニクス(1999年9月20日号)
http://ne.nikkeibp.co.jp/
http://ne.nikkeibp.co.jp/NE/1999/990920/tokushu1.html
http://job.nikkeibp.co.jp/trend/t19990927_1.html
 
 
2. 連邦政府もたばこ訴訟
 全米50州がたばこメーカーを訴えた訴訟は、和解の運びとなり収束に向かったと思いきや、今度は連邦政府が訴えた。
 日本的発想からすれば、役所が民間企業を訴えるという話自体が珍しい(国を訴えるケースは多いが、逆となるとかなり問題になりそう)。加えて、地方公共団体のみならず(←州をあえてたとえると)国(連邦政府)まで出てくるとなれば、メーカーとしてはたまらないだろう。もっとも、以前から今回の訴訟はいわれていたので、驚く話でもないようだが。読売新聞によればクリントン政権による大統領選の戦略だそう。
 
関連情報:
・「連邦政府も提訴へ メーカーは250億ドル支払え 米たばこ訴訟 『大統領選の戦略』と業界反発」読売新聞(1999年9月23日)
・MARC LACEY, "Tobacco Industry Accused of Fraud in Lawsuit by U.S." The New York Times (September 23, 1999).
http://www.nytimes.com/library/national/092399tobacco-lawsuit.html
 
 
3. 作図ソフトウェア
 ビジオがマイクロソフトに買収された模様。
 個人的に、ビジオはフローチャート描きに重宝しています。設計図面に特化したというビジオ・テクニカルを使用中。将来的には特許図面の作成もできないだろうか、と考えていますが、どんなもんでしょう。ビジオか、オートキャドか、JW_CADか、あるいは花子で...
 個人的には、オートキャドをベースに、ビジオ並みの操作性を実現したアドオンで、特許図面に特化したソフト(ハッチングが簡単とか)を作って欲しい。
 
関連情報:
・「MicrosoftがVisioを買収。Office事業を強化へ」ZDNN(1999年9月15日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/16/b_0915_01.html
・「ビジオ・ジャパンVisio 2000 Standard Edition作図の手順を減らし、作業効率を向上」日経パソコン1999年9月6日号
http://pcgaz.nikkeibp.co.jp/pg/pcgaz/buy/rev/soft/soft_51.html
・ビジオ・ジャパン
http://www.visio.co.jp/
http://www.visio.co.jp/news/msvisio_990917.html
 
 
4. ソフトその2 翻訳ソフト
 ノヴァの英日翻訳ソフト「PC-Transer/ej」を特許向けに特化したという「PAT-Transer/ej」がバージョンアップしてVer.2.0に。価格49万8000円が、新発売キャンペーン価格39万6000円也!
 PCトランサーは使っていますが、特許用は使ったことがないので判らない。聞いた話では使い物にならなかったというが、今回のバージョンアップは如何に。
 PCトランサーは仕事には使い(使え)ませんが、以前は英文記事を読むとき等に使っていた。辞書を教育していけば、少しは賢くなる。但し手間がかかるので、仕事というよりは趣味で片手間の息抜き的にやっている。そうしていく内に自分が教育されて、そのころには翻訳ソフトも不要になっていく。教育するつもりで自分が勉強しているという新手の英語学習スタイル?
 
関連情報:
・「ノヴァが特許用英日翻訳ソフト『PAT-Transer/ej』をバージョンアップ」ZDNet/JAPAN(1999年9月21日)
http://www.zdnet.co.jp/news/products/9909/21nova.html
・ノヴァ「PAT-Transer/ej」
http://www.nova.co.jp/products/patej.html
・専門語辞書参照サービス
http://www.nova.co.jp/webdic/webdic.html
(無料で使えるのが嬉しい専門語辞書)
・翻訳ソフト使いこなしレッスン&ノヴァニュース
(メールマガジンと呼ぶにはあまりにお粗末。ダイレクトメールに毛が生えた程度。)
http://www.nova.co.jp/mm/
 
 
5. 発明売買市場
 ZDNet/JAPANより。発明をネット上で取り引きする市場がオープンしたとのこと。この手の話は残念ながら怪しいものが多かったりするが、これはまともか?(失礼)
 
関連情報:
・中野恵美子「発明を売買できるフリーマーケット『発明市場』がオープン」ZDNet/JAPAN(1999年9月21日)
http://www.zdnet.co.jp/internet/news/9909/21/news03.html
・発明市場
http://www.hatsumei.ne.jp/
・発明工房
http://kobo.hatsumei.ne.jp/
 
 
1999/09/22
 
1. ビーニー・ベイビー
 アメリカで人気のあった小型ぬいぐるみ「ビーニーベイビー」の製造元ty社が、著作権侵害でホーリーベアーズ(HolyBears Inc.)をイリノイ州北部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the northern district of Illinois)に訴えたとのこと。訴えに係るぬいぐるみは、ホ社製のぬいぐるみで、胸にメッセージ("God Bless Texas"とか、"WWJD"(What Would Jesus Do?)等のクリスチャン的メッセージ)を縫い込んだテディベア。
 ビーニーベイビーは日本でも最近発売されたらしいが、アメリカでの人気は最近下り坂。先日生産中止(引退(retire)と呼んでいる)を発表したばかり。
 
関連情報:
・"Beanie Babies at war with religious teddy bears" Reuters (LOS ANGELES) (September 21, 1999)
http://legalnews.findlaw.com/scripts/legalnews.pl?nofr=y&L=Intellectual_Property&R=/news/19990921/bcretailholybears.html
・Carol Marbin Miller, "Toying with Beanie Babies: South Florida man accused of violating trademark of stuffed bear", Miami Daily Business Review (September 23, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/A6269-1999Sep22.html
(上記と別件の、先月マイアミ連邦地裁にJohnny Martinezを商標法違反で訴えた事件。正規のぬいぐるみを購入した同氏が、非営利のマイアミ小児病院(Miami Children's Hospital, a nonprofit pediatric medical center)のために販売する「記念バージョン」仕様として手を加えて販売したというもの。)
 
 
2. レメルソン特許
 インターネット・パテントニュースより。
 今年の4月にレメルソン財団が88社を特許権侵害で訴えた事件で、問題となっている特許について紹介されている。多くの瑕疵(印刷上の誤記?)を含んでいるとのこと。
 
関連情報:
・Greg Aharonian, "PATNEWS: NCR sues Netscape; Some details on Lemelson lawsuits", Internet Patent News Service (Sep. 21, 1999).
・Craig Matsumoto, "Consultant hunts weakness in Lemelson patents", EE Times (Apr 9, 1999).
http://www.eet.com/story/industry/semiconductor_news/OEG19990409S0006
 
 
1999/09/20
 
1. iMac訴訟、まずはアップル一勝
 日経エレクトロニクス他より。アップルがiMac類似パソコンとしてソーテックのe-oneを不正競争防止法で訴えた事件で、東京地裁は出所混同のおそれありとして、製造、譲渡、引き渡し、展示、輸出入を禁止する仮処分を下した。
 アメリカでの訴訟は係属中。アメリカでも仮処分を申請したのだろうか。だとすれば日本の裁判所が今回仮処分を認可したスピードは、アメリカ以上!?
 
関連情報:
・畑陽一郎「東京地裁、iMac類似パソコンに出荷停止の仮処分」日経エレクトロニクス・Digital Consumer Electronics(1999年9月20日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-ce/1999/990920eone.html
・「製造販売差し止めの仮処分 東京地裁、『e-One』で 」毎日Interactive Computing(1999年9月20日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/20/1.html
===================================
「...東京地裁の決定書によると、アップルの申し立てを受けて地裁はソーテックに答弁書と準備書面など審尋を行う手続きに必要な資料の提出を求めたが、ソーテックは必要な資料を期日までに提出しなかっという。また、資料提出期日後に東京地裁は口頭による意見を求めたのに対して、ソーテックがe-Oneの正当性に関する理由を説明せず、その後提出された答弁書でも正当性が明らかにならなかった。
...東京地裁は決定書の中で、ユーザーがiMacとe-Oneを誤認混同したり、少なくともソーテックがアップルと何らかの資本関係、提携関係などを持つのではないかと誤認混同するおそれがあると認められる、としている。また、『法的紛争に至ったときには、正当性を示す根拠ないし資料をすみやかに提示することができるよう準備をすべきであるといえる。しかるに本件においては、前記のとおり、審尋期日において、債務者(ソーテック)からそのような事実上および法律上の説明は一切なされなかった』とも述べており、ソーテックが裁判手続きを進めなかったことで裁判所の心証を損ね、アップルの主張が認められたことがうかがえる。アップルはe-Oneの執行官による保管も求めているが、東京地裁はこの件についても12月15日までに結論を出すと述べている。」
===================================
・「東京地方裁判所、iMacの模倣に関し、ソーテックに対して仮処分を決定」アップルコンピュータ株式会社(1999年9月20日)
http://www.apple.co.jp/news/1999/sep/20apple_sotec.html
・日本語版:平井眞弓,岩坂彰「日本の裁判所がiMac模倣パソコンの販売差し止め」Wired News Report(1999年9月20日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/3086.html
・「ソーテック『徹底的に争う』 e-One仮処分決定で」毎日Interactive Computing(1999年9月21日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/21/3.html
 その後のソーテック側の発表。確かに、「誤認混同を生じる」といわれてもWindowsパソコンとマッキントッシュを間違えることは無いという主張には頷ける部分がある。購買者にどのようなレベルの者を想定するかによっても違うが。
・「e-one/iMac問題:関連する論評など」日経BP, Find'X
http://findx.nikkeibp.co.jp/e1_ron_1.html
 iMac訴訟関連ニュースが検索できる
・芹澤隆徳「e-oneはユーザーを混乱させる?仮処分決定に至る経緯」ZDNet/JAPAN(1999年9月20日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/20/sotec.html
===================================
...不正競争防止法では,ブランドのただ乗りやデッドコピー商品の販売などを「不正競争行為」としているが,その中に「他人の商品等表示(商号,商標,包装など)として広く認知されているものと同一もしくは類似した商品によって,消費者を混同させること」も含まれる。
===================================
・「ソーテック、仮処分決定に従い「e-one」の販売を中止」日経Biztechニュース編集部(1999年9月21日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/prom/82549
 
 
1999/09/17
 
1. 暗号製品の輸出規制が緩和
 ホット・ワイアード・ジャパンより。
 軍事技術への転用が可能な製品を厳しく規制しているアメリカでは、このところ暗号化技術については緩和の方向にあるようである。
 
関連情報:
・Declan McCullagh,日本語版:酒井成美,合原亮一「クリントン政権、暗号製品の輸出規制を緩和」Wired News Japan(1999年9月16日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/3072.html
・「米政府,暗号化ソフト輸出規制を緩和へ」ZDNN(1999年9月15日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/17/crypto.html
...米政府は64ビットまでの暗号技術の輸出は完全自由化する方針。これにより,現在の上限である56ビット暗号技術よりも256倍性能の高い暗号化ソフトの自由な輸出が可能になる。
 64ビットを超える暗号化技術を使うソフト/ハードの輸出も可能だが,そのためには,初回に技術評価を受けなければならない。企業各社は米国外で売られた製品の追跡義務を持ち,イラク,イラン,リビアなどのテロリスト国家を支援する国々への販売は禁止される。
 
 
2. IPに強い学校は
 ローニュースネットワークより。記事がカリフォルニア発なので何だが、ボールト・ホールというロースクールのバークレー法律技術センター(Berkeley Center for Law and Technology at Boalt Hall School of Law)というところが、優秀な講師陣を引っ張ってきて知財分野でトップになろうと頑張っているという話。今年USニュース&&ワールド・レポート(U.S. News & World Report)が同校を知的財産権法分野で一位にランクしたそうである。
 ちょっと前まではニューハンプシャーのお馴染みフランクリン・ピアース・ローセンターがIP関係では全米トップだったと思うが、最近はIPが注目を集めているためどこも力を入れてきているのだろうか。
 
関連情報:
・Brenda Sandburg, "The Place to Be for IP: At Boalt Hall, a center focusing on tech law is attracting IP stars" The Recorder/Cal Law (September 17, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/A5884-1999Sep16.html
 
 
3. 文化庁、中古ゲーム問題の新法制定を示唆
 毎日インタラクティブ・コンピューティングより。
 1999年9月17日、「東京ゲームショー」にて「中古ゲームソフト問題から21世紀のデジタル文化を考える」と題するシンポジウムが開催され、文化庁著作権課長、吉田大輔氏が講演。ゲームが映画にあたるかどうかで問題となった点にも触れ、中古販売を完全に排除するのでなく、共存という形での立法も視野に入れているようだ。
 
関連情報:
・「新たな立法措置も 中古ゲーム流通で文化庁」
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/199909/17/5.html
===================================
...「司法判断がどのように動いていくかという点と、(ゲームメーカーと流通の)当事者間のルールの形成の行方を見ながら、いずれも手詰まりになった時点で立法化をどうすべきかを考えるのが良い、との感触を持っている」
...5月の東京地裁判決...について「私どもも若干驚いた」
...中古ゲームを一定規制する新法設置にあたって同課長は「米国の場合、レンタルレコードで一切レンタルを認めない形での立法化に踏み切ったが、日本の場合、中古ゲームを全くなくすという立法は日本の風土からも難しい。当事者間の調整が必要となり、そのためには双方の説得力のある議論が不可欠」などと業界の努力を促した。
 
 
1999/09/16
 
1. ゼロックス、HPを控訴へ
 ゼロックス社が1998年5月、インクジェット・プリンターの特許権侵害でヒューレット・パッカード社を訴えていた事件で、1999年9月14日、ニューヨーク州ロチェスターのニューヨーク西部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Western District of New York)は先日、HPが訴えの却下を求めた即決裁判の申立を認めた。これに対し、ゼロックス社は控訴の意向を表明。
 本件ではインクジェットプリンタで高速、高品質印刷に使用される多色感熱印字ヘッドに関する技術(multicolor thermal inkjet print-head technology)が争われている。
 一方、両社は別の事件でも係争中で、こちらではインクジェットプリンタのみならずレーザープリンタでも使用される解像度拡大と色調整の技術に関する特許権侵害と契約違反が争われている。(いずれの事件も公判まで行き着いていない。)確か他にもあったはず。両社の間で係属中の訴訟は4件あったと記憶しているが、定かではない。
 
 
関連情報:
・" Xerox to appeal dismissal of patent suit", ROCHESTER, N.Y., Reuters (September 14, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990914/n14435946.html&nofr=y
Xerox Corp. v. Hewlett-Packard Corp., (W.D. NY 1999).
 
 
1999/09/14
 
1. DCバーのホームページ
 ワシントンDC連邦裁判所のホームページがオープンしたとの情報(リニューアルか?)。IPセクションがあり、過去のニュースレターが読める。
 
関連情報:
・District of Columbia Courts
http://www.dcbar.org/
・Intellectual Property Law Section
http://www.dcbar.org/sections/intellectual_property/
・NEWSLETTERS
http://www.dcbar.org/sections/intellectual_property/newsletters.html
・The Superior Court of the District of Columbia
http://www.dcsc.gov
・District of Columbia Court of Appeals
http://www.dcca.state.dc.us
 
 
1999/09/13
 
1. セイコーエプソン、ニューコートに逆転勝利(9/23加筆修正)
 一部で話題のセイコー・エプソン対ニュー・コート事件のCAFC判決が9月8日に出ている。地裁ではエプソンの特許は特許権行使不能(unenforcable)とされたが、CAFCはこれを逆転し、ニューコート社の侵害を認定している。ニューマン判事でよかった!?ただ残念ながら、特に目新しい判示はなされていない。
 この事件、日本人にとっては「英語の宣言書を読んで内容を理解しましたとサインするとき、本当に内容を読んでいるのか」という重要な問題がクローズアップされていた。
 発端は、ビジネス・ウィーク誌(Business Week)の記事であった。この記事では、エプソンのインクジェット・プリンターのカートリッジに関する特許が地裁で無効になったと短く報告されていた。
 その後、モリソン法律事務所の日本語ニュースレターでこの件が紹介された。同法律事務所の山崎友宏氏が、ビジネスウィークの記事を基に「この裁判の判決文コピーの入手が出来ないため詳細な報告ができないが、多分次のような問題を抱え込んだと思う」と前置きして、出願時に提出する宣言書のサインの問題を警告されている。要するに、発明者が規則1.63の宣誓書もしくは宣言書(Oath or Declaration)において、「自分が真の発明者であり、明細書の内容を理解しており、開示義務を承知しており、云々」と宣誓もしくは宣言するのだが、この書面が英語で書かれているのを読まずに、あるいは理解せずにサインしたため、特許が無効とされたのだろうというものであった。
 この点は以前から問題ではといわれてきただけあって、注目を集めた。しかし、肝心の地裁判決が公開されていない(何らかの事情で当事者が非公開を請求したのであろう)ため、簡単に詳細を知ることができない状態であった。何しろ、裁判記録を取り寄せようとしても、目録だけで180ページあったらしい。どの記録にあたればよいのか、普通では知りようがない。
 このような状況で、被告ニューコート側の弁護士が戦勝報告とでもいうべき論文を発表した。月刊国際法務戦略(ILS)1997年12月号「米国の特許制度における『日本的』訴訟戦略の問題点:セイコー・エプソン事件に見る『原告』としての日本企業への教訓」である。ここで初めて、問題となったのは規則1.68の宣言書ではなかったことが一般に明らかになった。
 要は、審査段階で「誤って」先行技術でないものを「先行技術」と言ってしまったため、これを取り消すための宣言書(論文では「陳述書」とされている。誤りであったとの陳述書と、その内容が正しい旨の宣言書?)にサインした際、この宣言書が英語で書かれていて日本語訳が添付されていなかったことが問題とされたようである。同論文によると、1997年3月5日の正式決定で、地裁裁判官は宣言書に英語翻訳文が添付されていなかったことを理由に、エプソンの特許は権利行使不能であると認定した。
(米国特許制度では、先行技術とは一般に102条に列挙されたものである。逆に言えば、これ以外のものは先行技術とならないので、審査官は102条列挙以外を根拠に拒絶理由を打てない。しかし、102条列挙以外のもので、法的には先行技術でないものであっても、発明者が自ら先行技術と認めてしまうと、これは自認による先行技術(admitted prior art)となり、これに基づいて審査官は拒絶を発することができる(ノミヤ事件等)。例えば、発明者自身による失敗例や研究開発過程で作成した例等、出願・公開等されていないものを「先行技術」もしくは「従来例」として記載することは、みすみす拒絶のネタを審査官に与えることになるので、アメリカの実務としては好ましくない。よって米国出願では不用意に「先行技術(Prior Art)」「従来技術(conventional art)」という言葉を使うべきでないとされている。あるいは、日本語明細書の英語翻訳時に「関連技術(related art)」、「関連情報(background information)」等と書き直すよう奨励されている。
 また、一旦先行技術と明細書中で述べてしまったあとは、この主張を覆すのは困難といわれている。しかし、全く不可能でもないらしい。本件のエプソン事件では、審査段階で提出された先行技術の主張撤回の陳述書を審査官は何も言わずに認めている。このように審査官によっては素直に認めてくれる場合もあるし、また認められない場合もある。ある方のお話では五分五分という。もちろん、問題を避けるためには最初から先行技術の自認を避けるよう務めるべきことは言うまでもない。)
 問題となったのは規則1.69の解釈である。基本的に、規則1.69は1.63の宣言書(英語で書かれている)について発明者が英語を理解できない場合に、この者が理解できる言語の翻訳を付けることを定めた規定である。この規定は1.63の宣言書のみに適用されるものなのか、あるいは他の宣言書にも適用される性質のものなのかが焦点となった。地裁裁判官は、他の宣言書にも適用されるべきと読んだようである。
 しかし、上記ILSの記事ではこのあたりの詳しい議論がない。まあ、勝った側は都合のいいように何でも好きなこと言い放題だな、と冷ややかな見方もできる。実際、この記事では当然ながら被告側に有利なことしか述べられていない(あらためて読み返してみると、「虚偽の」陳述書とか(CAFCは虚偽があったとしていない)、デザイン特許は「装飾的でなく機能的である」から特許とならないとか(この地裁判断は誤りであるとしてCAFCで覆された)、挙げ句の果てには対象特許を「サブマリン・パテント」呼ばわりしたり、かなり一方的な見解が目に付いた)。しかしながら、例えばエプソン側の申し立てた差し止め請求は認められており、ニューコートは設計変更を余儀なくされていたりで、実は被告側が全面勝訴しているわけでも何でもないのだが。
 また、上記論文のすぐ後に、服部健一米特許弁護士も「発明」誌上でこの事件に触れられている。この中では、サインが問題となったのは規則1.132の宣言書であったと述べられていた。しかし、後に1.132でもなかったと判明している。同氏は再度「発明」誌上で本件に短く言及されており、間違いなく今回の結果も同誌上で報告されることだろう。
 このような経過で、日本人特許関係者の間ではこの事件に対する興味が持たれていた。結局、詳しい情報を得るには両当事者がCAFCに控訴した際のブリーフを読むのが一番確実であった。(CAFCに直接出向けば、ブリーフを借りて自分でコピーすることができる。)その後、CAFCでの口頭弁論も昨年行われ、日本人も何人か傍聴したようである。又聞きであるが、このときは宣言書のサインの件はあまり触れられなかったらしい。もっとも、口頭弁論で中心になったことと、後の判決文で中心になることは多くの場合一致しないようであるが。
 それで、今回やっと結論が出たわけである。しかし、肝心の争点についてはうやむやなまま、脚注4で「決定を要しない」とされただけ。
"4 In view of this cure, we do not reach the general question of whether the correct scope of §1.69 is that every declaration of a non-English speaking declarant, at every stage of patent prosecution, must be executed in the declarant's language."
 一応、経緯を説明するとエプソン側は規則1.69が出願時の宣言書およびその補足宣言書にのみ適用されるものであること、仮にそうでないとしても、日本語/英語併記の宣言書を改めて提出したので問題はないこと、また、そもそもそのような宣言書がなくても大丈夫なこと、等を主張した。
 地裁では、宣言書に日本語がなかったという理由だけで最終的に権利行使不能を認定したような節があり、他の証拠を十分検討していなかった。権利行使不能の認定には、特許庁を欺く意図(intent to mislead)と不提出に係る情報の重要性(materiality)が重要な要因であり、すべてを検証した結果、権利行使不能を主張する側が「明白かつ説得力のある証拠(clear and convincing evidence)」によって不衡平行為(inequitable conduct)を立証している必要がある。(この基準はかなり高いので、裁判官は権利行使不能を認めたがらない傾向にある。)本件のように、単に日本語訳がなかったというだけで認定される程簡単なものではないのである。CAFCによれば、翻訳の欠如のような形式的な瑕疵では足りず、詐欺的意図の立証が必要であるのに本件ではそれがない、もしくは検討されていないという。こういうわけで、地裁の決定は普通に覆されてしまった。話題になった割には物足りない判決である。
 
・デザイン特許について
 地裁では、インクカートリッジのデザインもしくは形状は消費者の関心事でない("not a matter of concern to consumers" 、購買者を喚起するものでない)として無効とされた。その理由として、インクカートリッジは取り付け後使用中には見ることができない点を挙げた。
 しかしCAFCはこのような前提は誤りであるとした。
デザイン特許の有効性は物品が使用中全般にわたって目視できることを要しない。デザイン特許の要件は製造物の形状(design of an article of manufacture)であること、および特許法の規定を充足することである。
例)キーストン・リテイニング対ウェストロック事件では壁のブロック
Keystone Retaining Wall Systems, Inc. v. Westrock, Inc., 997 F.2d 1444, 27 USPQ2d 1297 (Fed. Cir. 1993) (design patent for wall blocks much of which are not visible after installation)
 ウェッブ事件では臀部補綴
In re Webb, 916 F.2d 1553, 16 USPQ2d 1433 (Fed. Cir. 1990) (design patent for a hip prosthesis that is not in view after implantation in patient)
∴使用期間中に可視部分に露出していないものはデザイン特許の対象とならないとした地裁の判断は誤り
 また審美性については現に美しい必要はない。デザインに関する法定の「装飾」要件とは、デザインが機能性のみに支配されていないことを意味する。すなわち、当該機能を果たし得る物品の形状として唯一可能な形状でないことを要求している(LAギア事件)。
 デザイン特許は使用に適した(useful )物品に関するものであるが、その特許性は物品のデザインに基づくものであり、使用(use)ではない。
デザインはその識別性もしくは購買者の注目に寄与することはあるが、美的特徴がないからといってそのデザインが純粋に機能的であると意味するものでない。
Nor need the design be aesthetically pleasing. The "ornamental" requirement of the design statute means that the design must not be governed solely by function, i.e., that this is not the only possible form of the article that could perform its function. See L.A. Gear, Inc. v. Thom McAn Shoe Co., 988 F.2d 1117, 1123, 25 USPQ2d 1913, 1917 (Fed. Cir. 1993). A design patent is for a useful article, but patentability is based on the design of the article, not the use. The design may contribute distinctiveness or consumer recognition to the design, but an absence of artistic merit does not mean that the design is purely functional.
∴地裁の依拠した根拠は誤りであるため、デザイン特許無効の判決は破棄逆転
 
関連情報:
・セイコーエプソン対ニューコート事件
Seiko Epson Corp. v. Nu-Kote Int'l, Inc., No. 97-1313 (Fed. Cir. 9/8/1999) (58 PTCJ 548 9/16/1999).
http://www.law.emory.edu/fedcircuit/sept99/97-1313.wp.html
・Briefs, Seiko Epson Corp. v. Nu-Kote Int'l, Inc., No. 97-1313 (Fed. Cir. 1999).
・ロナルド・S・カッツ,デービッド・シュナプフ,リリアン・K・カナガワ「被告側弁護士から見た日本企業特許戦略の問題点 米国の特許制度における『日本的』訴訟戦略の問題点 セイコー・エプソン事件に見る『原告』としての日本企業への教訓」月刊国際法務戦略(1997年12月号)
 Ronald S. Katz, David Schnapf, and Lillian K. Nakagawa, "HOW TO AVOID PROBLEMS WITH THE U.S. PATENT SYSTEM: A CASE STUDY", Coudert Brothers (October, 1997).
(日本語訳の質はまあまあ。"utility patent"を「実用特許」としているあたりはいただけない。
 上記論文は「日米知的所有権問題アップデイト'99」(ILS出版)にも対訳で再掲されている。)
・Ronald S. Katz, David Schnapf, and Lillian K. Nakagawa, "Pitfalls in Getting and Keeping US Patent Rights: Foreign companies, in particular, may be ambushed by America's tough rules." IP Worldwide (January/February, 1998).
 上記とほぼ同じ内容の英語論文。以前はウェブ上で読むことができた。しかし、最近同紙がIP Today誌と統合されたようで、そのためにバックナンバーがウェブ上からなくなっている。
・Stephanie Anderson Forest, "Black Day for an ink-jet Titan.", Business Week (April 7, 1997).
・山崎友宏「日本人所有の全ての米国特許は無効となるのでは?」NEWSLETTER 48: Morrison law Firm: Patent and Trademark Law (June, 1997).
・"Nu-Kote Ships Redesigned Seiko-Epson Compatible Inkjet Cartridges.", Business Wire (August 14, 1997).
・"NU-KOTE REALLY UPSETTING THE PRINTER BIG BOYS, THIS TIME SEIKO'S EPSON WINS AN INJUNCTION.", ASAP, Information Access Company, a Thomson Corporation Company; Apt Data Services Ltd. (UK) Computergram International (August 18, 1997).
In re Nomiya, 509 F.2d 566, 184 USPQ 607 (CCPA 1975).
Reading & Bates Construction Co. v Baker Energy Resources Corp., 748 F.2d 645, 223 USPQ 1168 (Fed. Cir. 1984).
    In Nomiya, the patentees, citizens and residents of Japan, filed a patent application containing two drawing figures labeled as prior art, and statements explanatory thereof. The figures referred to an invention of another in Japan which would not have been prior art by virtue of any sub-section of §102. The CCPA, in nevertheless considering the thus described Japanese invention as prior art, stated:
By filing an application containing Figs. 1 and 2, labeled prior art, ipsissimis verbis, and statements explanatory thereof appellants have conceded what is to be considered as prior art in determining obviousness of their improvement. [509 F.2d at 571, 184 USPQ at 611-12].
 
 
1999/09/09
 
1. ファインド・ローの合衆国憲法コーナーに特許の話
 合衆国憲法に特許条項があるのは有名な話。findlawのサイトに憲法のコーナーができたというので覗いてみたら、いきなり出てきた。期間限定かも知れませんが。
 
関連情報:
・Constitutional Law Center
http://supreme.findlaw.com/Documents/IP.html
 
 
1999/09/08
 
1. 米特許庁データベース、さらに拡張か?
 インターネット・パテントニュースからその一。
 米特許庁が古い米特許公報を、1790年頃まで遡ってOCRでテキストデータ化していた作業が終了した模様。望ましくは、無料の特許データベースとして使えるよう一般開放して欲しいものである。
 インターネット・パテントニュースからその二。
 元米特許庁審査官(Barry Bowser)が、特許庁を爆破しようとしたとして告発されているとのこと。流石はアメリカ!なんでも、自分の審査した特許を再審査されること、つまり審査の適正を疑われたことに逆上したからだとか。
 
情報元および関連情報:
・Greg Aharonian, "PTO finishes OCRing patent texts back to 1790", Internet Patent News Service, 19990908 (September 8, 1999).
・Greg Aharonian, "Should disturbed examiner's patents be reexamined", Internet Patent News Service, 19990907 (September 9, 1999).
U.S. v. BARRY CHARLES BOWSER, No. 98-556-M (E.D.Va 1998).
 
 
1999/09/07
 
1. 商標とドメイン名(作成中)
 一部で話題になったドメイン名を巡る商標事件。エイブリイ・デニスン社(Avery Dennison)は文房具メーカーとして米国ではつとに有名。
(例えばワードの「ツール」→「宛名ラベル作成」を使うと、ラベル製品名にヒサゴの帳票に混じって"Avery" Standardの名称がある。
 全く余談だが、Avery のラベルサイズはかなりポピュラーなため、競業他社も同サイズの互換品を販売している。「このラベルはAvery 5160番と同じものです」という風に。これでは困ると思ったのかどうか定かではないが、なんとエイブリイ社は製品番号を商標にしているのである。
 単なる数字では「登録」商標にならないと一般には考えられている。例えばインテル社は「486」を商標登録できなかったため、互換チップメーカー対策として「586」に代わり「ペンティアム」との名称を採用した。
 一方、アメリカでは「コモン・ロー」の商標(Common Law Trade Mark)というのがある。使用主義的というか、大雑把に言えばあるマークなり名称なりを使用している者が「これはうちの商標だ」と考えるものは商標という考え?であり、商標の右肩に「TM(トレード・マーク)」と付して商標であることを宣言するのである。そのせいか、米国製品にはキャッチコピーとかスローガンとかに、やたらとTMの印が付いている。例えばマイクロソフト社の「Where do you want to go today?」(これは現在では同社の立派な登録商標(Registered Trade Mark、おなじみの○R))、マクドナルド社の「did somebody say Mcdonalds?」等々
 という訳で、エイブリイ社のラベル商品には、ラベルの型番にTMと書かれている。幾つかの番号は既に登録もされている。このような戦略は覚えておくべきかも知れない。ただし、そのことと商標登録できるか否かの問題は別。)
 前振りが長くなったが、エイブリイ・デニスン社が「エイブリイ(avery.net)」と「デニスン(dennison.net)」のドメイン名に対して商標を希釈化するものであるとして訴えていた裁判で、第9巡回裁判所は同社の訴えを退ける判決を下した。
 原告エイブリイ・デニスン社は「エイブリイ」「デニスン」双方の登録商標を有している。
 被告ジェリー・サンプソン氏(Jerry Sumpton)はフリービュー社(Freeview)の社長で、関連企業のフリービュー・リスティング社(Freeview Listings Ltd.)はユーザーのドメイン名とeメールアドレスを登録するプロバイダーである。多くはユーザーの名字を使っており、その中に"avery.net"と"dennison.net"が含まれていた。
 エイブリイ・デニスン社はこれらのドメインが同社の所有する登録商標を希釈化(trademark dilution)するものであるとして、商標希釈化法(商標法1125条(c)、the Federal Trademark Dilution Act of 1995, 15 U.S.C. S 1125(c) (Supp. II 1996) (amending the Lanham Trademark Act of 1946, 15 U.S.C. SS 1051-1127 (1994)))およびカリフォルニア州法の希釈化法(trademark dilution under , and the California dilution statute, Cal. Bus. & Prof. Code S 14330 (West 1987))に基づき、カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所(United States District Court for the Central District of California)に訴えた。
 地裁は、エ社の商標が著名であるとして希釈化を認めるサマリージャッジメントを下し、さらにドメイン名の登録を被告からエ社に各300ドルで移転するよう命じた。これに対し、被告側が控訴していたもの。
 控訴審において第9巡回控訴裁判所は、地裁がサマリージャッジメントを認めたことは誤りであるとした。サマリージャッジメントの認定には、著名性に関して真正な争点がないことが必要である。原告側は、以下を立証できたときに希釈化防止法に基づく差し止め救済を得ることが認められる。
(1)商標が著名であること
(2)被告が当該商標を商取引において商業的に使用していること
(3)原告の商標が著名になった後に被告が使用を開始したこと
(4)被告の使用が希釈化のおそれを示していること
 
 
関連情報:
Avery Dennison Corp. v. Sumpton, No. 98-55810 (9th. Cir. 8/23/1999).
http://laws.findlaw.com/9th/9855810.html
・"More Than Distinctiveness Is Needed To Establish Fame for Dilution Protection", 58 PTCJ 1440 (9/2/1999).
・「類似ドメイン名は商標侵害にならず/米控訴審」
(このサイトの情報は、スターダストから得ました)
http://www.mainichi.co.jp/digital/internet/199908/26/05.html
http://user.globe.or.jp/stardust/99tradmark.htm
・Avery Dennison Corporation
http://www.averydennison.com/ad/home.html
 
Notice:このページの末尾にも書いてありますが、本ページには各社の登録商標が使用されていますが、特に(TM)とか丸Rといった商標登録表示は行っておりません。念のため。
 
 
1999/09/03
 
1. 日本行政機関の違法コピー問題
 毎日新聞より。ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)が違法コピー問題について日本側に対処を要請するとのこと。これはやっぱりまずいでしょう。問題にされる前に自分からやっておかないと。
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 日本国内の地方自治体などの行政機関内部でビジネスソフトの違法なコピー利用が横行しているとして、コンピューターソフトウェアの国際的な権利保護団体、ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA、本部・ワシントンDC)は2日までに、日本政府に適法な利用を各行政機関に徹底するよう在日米大使館を通じて要請することを決めた。BSAのロバート・W・ハリマン会長が3日、米国大使館を訪れて正式に要請する。BSAでは「行政機関が違法なコピー利用をして著作権法に違反していることに驚いている。行政機関が自ら適法なソフトの利用を行ってほしい」と訴えている。
 
関連情報:
・「BSA、政府に改善要請へ 行政機関のソフト不正使用で」毎日デイリーメール・インターネットIn-Box Direct(1999年9月2日)
 
 
2. インターネットアクセスの日米格差
 日経他。
 常時接続した場合の料金を日米で比較すると6倍から10倍だそうである。
 実はプロバイダの料金だけ見ると、そう大差はない。むしろ、安いくらいである。例えば私の地元徳島県では、NMTネットというプロバイダだとアクセス無制限で月1500円、ホームページ容量は20Mと極めてリーズナブル。ISDNサポートで混雑も少ない。
 アメリカではぴんきりだが、大体19.95ドル/月というのが基本。AOLだと少し高くて21.95ドル。安いところでは、ワシントンDC在住日本人が良く利用するerolsで13.95ドル(但し2年分前払いで手数料等を取られる)。
 結局高いのは電話代なのだ。アメリカでは市内電話かけ放題のフラットレートにしても、税込みでおよそ20ドル。テレホーダイのような時間帯制限もないので、正に繋ぎっぱなしにできる。
 このところNTTに非難囂々、言い訳はいいから何とかして欲しいもんである、本当に。
 
関連情報:
・「ネット常時接続利用料、日本は米国の6倍超」日経net ITコンシューマー(1999年9月3日)
http://www.nikkei.co.jp/business/itc/
http://www.nikkei.co.jp/business/itc/cont.html#dnni003202
・「インターネット常時接続料金、日本は米国の6倍以上、郵政省調査」Web Catch(1999年9月3日)
 実に興味深い記述
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...昨年の調査報告は、「ニューヨークの通信料金は時間制限のない一通話当たりの料金であるため、通信時間が長い場合には他都市と比べ大幅に割安となる」という注釈で「ニューヨークは常時接続環境」ということをあやふやにしていました。そして、「個人利用者が月間15時間利用」という想定で各都市を比較し、「インターネットの利用料金において、東京は平均的な水準にある」という結論に強引に持っていった印象がありました。
・「平成9年度電気通信サービスに係る内外価格差調査」郵政省(1998年7月31日)
http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/denki/980731j601.html
 
 
3. アップルの訴訟
 ホットワイアードJapanより。デザイン模倣の是非を考える。残念ながら唸るような議論はあまり無かった。
 
関連情報:
・「アップル、iMacのデザイン模倣で米イーマシーンズ、ソーテックを提訴 」HotWired Japan NEWS WATCHER'S TALK
http://www.hotwired.co.jp/nwt/
 
 
1999/09/02
 
1. 不正競争防止法対ランハム法(トレード・ドレス)
 アップルコンピュータがiMac類似パソコンの差し止め等を求めて、ソーテックを東京地裁に訴えた件は、不正競争防止法が根拠であったことが判明。日本にはトレード・ドレスの概念がないし、この短期間で特許権や意匠権が取得できていたとは思えない(いくら審査が速くなったとはいえ、パソコンのようなライフスパンが短い製品をこれで保護するのはちょっと大変)ことを考えると、当然の帰結。
 アップルは同じ製品を日米で訴えたわけである。いずれの国においても特許や商標などの法的な登録を受けていないという条件は同じ。それぞれどういう結果になるのか、比較してみると非常に興味深い。野次馬的で恐縮ですが、アメリカは判例法、まさにコモン・ローの国ですから、登録主義対使用主義的な見方もできるかも。
 
関連情報:
・日経パソコン編集部「アップル、ソーテック提訴は不正競争防止法に基づく」日経Biz Tech News(1999年9月2日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/gen/80705
・高橋史忠「ランハム法:“なんちゃってiMac”訴訟でAppleが狙う絶大な権利」日経Mac: News Eye(1999年9月3日)
http://mac.nikkeibp.co.jp/mac/editorial/newseye/9910.shtml
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...ランハム法は日本の商標法と不正競争防止法を合わせたような法律。
(※いずれも15 USC(Commerce and Trade、通商法)に編纂されている。一般にはランハム法といえば連邦商標法を指すことが多いが)
...ランハム法で訴える利点は,デザイン特許などで必要な文書による権利登録が不要なこと。ランハム法で製品のデザイン保護を受けるには,
1. よく売れた製品であること
2. 製品を売るときに「形」や「色」を宣伝文句にしたこと
など,製品デザインを有名にしたのが自社であると明確に主張できる根拠があり,それが妥当だと認められればよい。
(※ちょっと言い過ぎのような気が)
 ランハム法で訴える利点は,もう1つある。訴えた企業が自社の権利を拡大しやすくなるのだ。デザイン特許や意匠権ならば「どこまでが合法で,どこまでが違法か」という線を引きやすい。権利化したときの書類や図,文言などが残っており,他社の所有する権利が「見える」形で残っているからだ。ところがランハム法による権利では権利の範囲を明記した文書がないから,他社からは合法違法の線引きが難しい。
 デザイン特許や意匠権を利用せずに,米国のランハム法や日本の不正競争防止法で製品デザインを保護した例は意外と多い。身近なところでは,大流行したバンダイの「たまごっち」がそうだ。関連の訴訟に詳しい小島国際法律事務所の出井直樹弁護士によれば,「米国では同法で保護される商品形態の範囲がどんどん広くなっており,デザインだけでなく,店舗の店構えや店内の雰囲気,果ては製品の匂い,音といった商品形態に関する判例すら存在する」という。
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1999/09/01
 
1. 米特許庁ホームページより−エージェント試験問題他
 毎月一回は米特許庁ホームページを確認したい。
・いつのまにか、本年4月のエージェント試験問題と解答が特許庁ホームページに掲載されていた。PDF形式。L/W Patent Bar Reviewのものより綺麗だろうと期待してたが、ちょっと傾いています...
・子供向けのページが開設されている。
・商標関連では、ホームページからの商標登録出願が可能になっているようだ。直接商標を入力、もしくは画像ファイルを添付してクレジットカード払いで出願することも(e-TEAS)、提出フォームをダウンロードして郵送することも(PrinTEAS)可能なようである。
 
関連情報:
・Apply for a Trademark Online (TEAS)
http://www.uspto.gov/teas/index.html
・PTO launches innovative KIDS' Page
http://www.uspto.gov/web/offices/ac/ahrpa/opa/kids/index.html
・April 1999 Examination
http://www.uspto.gov/web/offices/dcom/olia/oed/
 
 
1999/08/31
 
1. 日本版「ロースクール」
 読売新聞一面より。東北大が四年の学部に、実務型の専門教育を主体とした二年の修士課程を組み合わせた「六年一貫コース」を来春から導入。政府の司法制度改革審議会が検討してる「日本版ロースクール(法科大学院)」を先行実施。
 
関連情報:
・「『ロースクール』で法曹養成 東北大が来春新設 学部と修士6年一貫コース」読売新聞(1999年8月31日)
 
 
2. 漫画の引用
 asahi.com news updateより。
 小林よしのり氏のベストセラー漫画「ゴーマニズム宣言」を批判した本「脱ゴーマニズム宣言」の著者、上杉聡氏と出版元の東方出版が、「漫画のカットを無断引用し著作権を侵害した」として訴えられていた事件の判決が言い渡された。請求棄却(漫画のネタ?)、つまり著作権法上認められた適法な引用であるとされ、侵害なし。納得できる結論。
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 森裁判長は、57点の引用部分を1つずつ検討し、「カットとして採録したのは漫画に対する批判が目的で、論説の理解を助けるものだ」と指摘。カット自体で独立した読み物になるものではなく、「論説が主、カットが従という関係にある」などと指摘した。さらに、「漫画は絵と文が不可分一体となった著作物で、著者の主張を批評する場合、対象を正確に示すためには絵を引用する必要がある」と述べ、「文だけを引用すれば足りる」とする小林氏側の主張を退けた。
 また、薬害エイズの被害者がニヤリと笑ったカットの目の部分を墨塗りするなど一部に手を加えた点についても、「これらのカットは本人が不快感を覚える程度に醜く描写されており、やむを得ない改変といえる」と述べ、いずれも著作権の侵害には当たらないと結論づけた。
 
情報元および関連情報:
・「『ゴーマニズム』批判本『カット引用は適法』 東京地裁」朝日新聞(1999年8月31日)
http://www.asahi.com/0831/news/national31030.html
・H11. 8.31 東京地裁 H9(ワ)27869 漫画カット著作権等
http://courtdomino.courts.go.jp/chiteki.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/f64de0bcf52795c7492567de0030b241?OpenDocument
 
 
3. Windows版プレステエミュレータ、差し止めならず
 ソニー・コンピュータ・エンタテインメント・アメリカ(SCEA)がWindows上で走るプレステエミュレータ「bleem!」を訴えていた件は、カリフォルニア連邦地裁で出荷差し止めの仮処分が認められなかった模様。この件では4月にもSCEAが求めていた緊急仮出荷差し止め請求が却下されており、ソニー連敗。なお、正式の公判は2000年4月に開始。
 
関連情報:
・「PlayStationエミュレータ製造/販売OK--米連邦裁がSony提訴却下」日経Biz it(1999年8月28日)
http://pcgaz.nikkeibp.co.jp/pg/pcgaz2/wcs/leaf?CID=onair/biztech/cons/80326
・「ウインドウズ・プレステエミュレーター仮出荷差し止め却下」毎日デイリーメール・コンピューティング(1999年8月30日)
(...出荷差し止め、一時出荷差し止めは、いずれも本訴の審理に入る前の段階で、相当の理由がある場合に認められる。同様にマッキントッシュ用のプレステエミュレーターを販売していた米コネクティクスのバーチャルゲームステーション(VGS)については、出荷差し止め仮命令が認められている。)
 
 
4. CAFC新判事
 空席になっているCAFC判事に、フォーリー&ラードナーのリチャード・リン氏(Richard Linn)が決まったとの噂。
 
 
1999/08/29
 
1. 日本でも「ビジネスモデル特許」
 1999/08/27付日経コンピュータより。
 まだ出願公開されただけで特許にはなっていないが、日本でも「ビジネス・モデル特許」が出願されているらしい。例として挙げられているのは日立製作所の「商品価格を順次下げていく“逆セリ”をネットワーク上で実現する手法」、住友銀行の「仮想口座を使った入金照合サービス」、ライオンの「逆MRPを用いた在庫管理システム」等。
 
関連情報:
・田口 潤「日本で“ビジネス・モデル特許”の出願相次ぐ:日立製作所や住友銀行などが出願」日経コンピュータ(1999年8月27日)
http://nc.nikkeibp.co.jp/jp/news/1999082702.html
・「[緊急トレンド・レポート]ビジネス・モデル特許の衝撃」ビジネス・モデル研究会,InfoCom情報通信総合研究所(1999年9月)
http://www.icr.co.jp/newsletter/trend/series/1999/s99U0101.html
(↑その後こういったものも出てきた。まるで猫も杓子も特許という感じ)
 
 
1999/08/24
 
1. アップル、日本でも提訴
トレード・ドレスについて(1999/09/09追加)
 1999/08/20ひとりごとでお伝えした米アップルによるe-one提訴に続き、遂に日本国内でも提訴。訴えられたのは日本でe-oneを販売しているソーテック。アップル社は製品の販売差し止めを求めて東京地裁に提訴している。しかし、そもそもe-oneをデザインしたのはソーテックらしいし、しかもe-oneが日本で売れていることから考えても、当然の流れといえば当然かもしれない。気になるのは、日本では米で認められているトレード・ドレスという概念がないため、難しいのではないかということ。米でも今回トレード・ドレスが認められるかどうかはちょっと微妙なようだし。
 
関連情報:
・「アップルがソーテック提訴」毎日デイリーメール(1999年8月24日)
・Craig Bicknell,日本語版:寺下朋子,合原弘子「『iMac』デザイン訴訟、アップル社の勝算は微妙」Wired News(1999年8月25日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2974.html
(今回のニュースほど、「トレード・ドレス」が話題に上った記事が(日本で)多く出た事件はないのでは?トレード・ドレスという概念は、まだまだ日本ではあまり馴染みがなかったようなので、周知徹底に一役買っているのでは??以下、判りやすい説明を引用。)
====================================
...「トレードドレス」とは、ある製品に特徴的な美的デザインを指す法律用語。
...機能を重視した結果のデザインであるとすれば、トレードドレスの侵害には当たらない。翼があるからといって、航空機のデザインが商標の侵害に当たらないのと同じことだ。
...色に関しては、機能上の明らかな理由はないものの、色だけでトレードドレス訴訟に勝つのは難しいと弁護士らは言う。
====================================
・Craig Bicknell, "Apple Defends its Blueberry Bush" Wired News (August 25, 1999).
http://www.wired.com/news/news/business/story/21423.html
・Dan Goodin,日本語版:三橋直樹「今度は勝てそうなアップルの商標裁判」CNET Japan Tech News(1999年8月25日)
(著作権とトレードドレスの違いにつき、判例等も絡めてよく書かれているが、日本語訳が今ひとつ。有名なマッカーシー(McCarthy's Desk Encyclopedia of Intellectual Property)を「マッカーシーの知的所有権卓上百科事典」と訳していたりするあたりが微笑ましい
http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/990826-8.html
・Dan Goodin, "Apple's trademark fight may be different this time", CNET News.com (August 25, 1999).
http://www.news.com/News/Item/0,4,40929,00.html
(「固有の識別性("inherently distinctive")」または「副次的意味("secondary meaning")」が必要)
・アップル対マイクロソフト
 Apple Computer Inc. v. Microsoft Corp., 32 USPQ2d 1086 (9th Cir. 9/19/1994).
(これについては1999/07/02ひとりごとも参照。しかし、あらためて本件を読み返してみると、「ルック&フィール」という言葉が出てくるのは判決中以下の部分のみであった。)
...Dissection is not inappropriate even though GUIs are thought of as the "look and feel" of a computer, because copyright protection extends only to protectable elements of expression.
・オーウェン・コーニング・ファイバーグラス社事件
 In re Owens-Corning Fiberglas Corporation., 774 F.2d 1116, 227 USPQ 417 (Fed. Cir. 10/8/1985).
合議体:ニューマン、ビッセル(反対意見)、コーウェン判事
判決文:ニューマン判事
 1946年商標法が成立する以前は、色自体では商標として登録できなかった。
...Prior to passage of the Trademark Act of 1946, 15 U.S.C.§1051 et seq. (the Lanham Act), color alone could not be registered as a trademark. In 1906 the Supreme Court wrote:
Whether mere color can constitute a valid trade-mark may admit of doubt. Doubtless it may, if it be impressed in a particular design, as a circle, square, triangle, a cross, or a star. But the authorities do not go farther than this.
A. Leschen & Sons Rope Co. v. Broderick & Bascom Rope Co., 201 U.S. 166, 171 (1906).
 オーウェン・コーニング・ファイバーグラス社は、同社の繊維ガラス製住宅断熱材(fibrous glass residential insulation)について、ピンク色を商標として出願。
 商標審判部は、色は商標として機能し得ると認めたものの、ピンク色がオーウェン・コーニング・ファイバーグラス社の商品であるという識別力を有すると同社が立証できていないとして拒絶査定を維持。
 控訴審においてCAFCは審決を破棄し、ピンク色を商標として認めた。
...An overall color is akin to an over-all surface design, for which trademark registration has been held to be available when the statutory requirements are met. See, e.g., In re Todd Co., 290 F.2d 597, 600, 129 USPQ 408, 410 (CCPA 1961) (registration on the Supplemental Register of a pattern of green parallel lines for safety paper products); Vuitton et Fils S.A. v. J. Young Enterprises, Inc., 644 F.2d 769, 775, 212 USPQ 85, 89 (9th Cir. 1981) (protection granted to a mark consisting of an overall pattern of florets and letters). Cf. In re Soccer Sport Supply Co.,Inc., 507 F.2d 1400, 1403, 184 USPQ 345, 347 (CCPA 1975) (registration refused for an overall design covering a soccer ball, for lack of distinctiveness).
・クオリテックス対ジェイコブソン・プロダクツ最高裁判決
 Qualitex v. Jacobson Products, 514 U.S. 159, 34 USPQ2d 1161 (1995).
http://laws.findlaw.com/US/000/U10301.html
 上記事件を追認し、色も商標として認められ得ることを判示
...The courts of appeals have differed as to whether or not the law recognizes the use of color alone as a trademark. Compare NutraSweet Co. v. Stadt Corp., 917 F. 2d 1024, 1028, 16 USPQ2d 1959 (CA7 1990) (absolute prohibition against protection of color alone), with In re OwensCorning Fiberglas Corp., 774 F.2d 1116, 1128, 227 USPQ 417 (CA Fed. 1985) (allowing registration of color pink for fiberglass insulation), and Master Distributors, Inc. v. Pako Corp., 986 F.2d 219, 224, 25 USPQ2d 1794 (CA8 1993) (declining to establish per se prohibition against protecting color alone as a trademark). Therefore, this Court granted certiorari. 512 U. S. ___ (1994). We now hold that there is no rule absolutely barring the use of color alone, and we reverse the judgment of the Ninth Circuit.
・菊間忠之「判決WATCHING〜March 1999年 米国知的財産権法関連〜」
(Alサイト事件から、トレードドレスの成立要件をまとめられている。)
http://www.people.or.jp/~kikuma/mar1999.html
・Alサイト対VSIインターナショナル社事件 1999年3月30日CAFC判決
 Al-Site Corp. v. VSI Int'l, Inc., 174 F.3d 1308, 50 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/Al-SitevVSI.htm
...Trade dress protection embraces the total image of the product including such factors as the size, shape, and color of the product's packaging and appearance. See Two Pesos, Inc. v. Taco Cabana, Inc., 505 U.S. 763, 765 n.1, 23 USPQ2d 1081, 1082 n.1 (1992). To prove trade dress infringement, the plaintiff must show:
(1) the inherent distinctiveness or secondary meaning of its trade dress,
(2) the essential nonfunctionality of its trade dress, and
(3) the likelihood of consumer confusion as to origin, sponsorship, or approval due to similarity between its and the defendant's trade dress.
See University of Fla. v. KPB, Inc., 89 F.3d 773, 776-77, 39 USPQ2d 1603, 1605 (11th Cir. 1996). Because this is a conjunctive test, failure to prove even one of these elements precludes a showing of trade dress infringement. Therefore, the defendant can secure a summary judgment of noninfringement by demonstrating that the plaintiff cannot show any element of the cause of action.
As mentioned above, protection hinges on the distinctiveness or secondary meaning of the trade dress. Distinctive trade dress enables consumers to distinguish a product from others and identify that product with its source. See id. at 776 n.5. The Eleventh Circuit gauges distinctiveness based on whether trade dress "[is] a 'common' basic shape or design, whether it [is] unique or unusual in a particular field, [and] whether it [is] a mere refinement of a commonly adopted and well-known form of ornamentation for a particular class of goods viewed by the public as a dress or ornamentation for the goods." Id. (quoting Ambrit, 812 F.2d at 1536). Trade dress can also satisfy this requirement by showing secondary meaning, or a "connection in the consumer's mind between the mark and the product's producer, whether that producer is known or unknown." Id. The plaintiff may show secondary meaning in several ways. The plaintiff may show secondary meaning with consumer surveys and with evidence of lengthy and uniform display of the dress. See Conagra, Inc. v. Singleton, 743 F.2d 1508, 1513, 224USPQ 552, 555-56 (11th Cir. 1984). The plaintiff may also show secondary meaning with evidence of the plaintiff's efforts ? usually through advertising ? to establish in the minds of the consumers a connection between the trade dress and its product. See id. Finally, the plaintiff may use other evidence showing consumers' association of the trade dress with the plaintiff or its product to prove secondary meaning. See id.
Trade dress must also be primarily nonfunctional. A trade dress is functional "if it is essential to the use or purpose of the article or if it affects the cost or quality of the article," Inwood Labs., Inc. v. Ives Labs., Inc., 456 U.S. 844, 850 n.10, 214 USPQ 1, 4 n.10 (1982), such that its protection would place a competitor at a significant disadvantage, see Qualitex Co. v. Jacobson Prods. Co., 514 U.S. 159, 165, 34 USPQ2d 1161, 1165 (1995).
Trade dress protection also requires evidence of a likelihood of confusion between the plaintiff's and the defendant's trade dress. Determining whether a likelihood of confusion exists requires weighing several factors:
(1) the nature of the plaintiff's mark,
(2) the similarity of the marks,
(3) the similarity of the products the marks represent,
(4) the similarity of the parties' retail outlets and customers,
(5) the similarity of the parties' advertising,
(6) the defendant's intent to copy or imitate the plaintiff's mark, and
(7) the extent of actual confusion.
See Wesco Mfg., Inc. v. Tropical Attractions of Palm Beach, Inc., 833 F.2d 1484, 1488, 5 USPQ2d 1190, 1193-94 (11th Cir. 1987).
 
 
2. Javaを巡る争いは高裁でマイクロソフト有利に
 サンマイクロシステムズがJavaを開発したとき、OSに依存しない高い互換性を含め、大いに話題になった。しかしOSに依存しないという点でマイクロソフトは危機を覚え、これをけなすものの、しっかりとライセンスを取得。ところが同社はウィンドウズに特化したJavaに改良して搭載。このマイクロソフト製Javaは、純正Javaよりもウィンドウズ上では若干高速に走るらしいが、他のOSでは動かない可能性がある。同社がJavaの互換性を崩そうとしたに違いないとサンマイクロは激怒、これを契約違反として1997年10月、サンノゼのカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に対し訴えた。サンマイクロは商標違反も主張。
 地裁ではサンマイクロシステムズの訴えが認められ、1998年11月、ホワイト判事(Judge Ronald Whyte)はマイクロソフトに対しJavaをサンの仕様と互換にする仮処分(preliminary injunction)を下した。しかしマイクロソフトはこれを不服として第9巡回控訴裁判所に控訴。
 しかし、控訴審では結局マイクロソフトの訴えが認められ、地裁差し戻しに。地裁では契約違反の問題と著作権侵害の問題が争われたが、結局著作権侵害に基づいて仮処分を認めていた。これに対し第9サーキットは、審理不尽として地裁の仮処分を破棄差し戻しとした。また地裁では不正競争に関してカリフォルニア州法を援用しているが、この法は過去の事実ではなく将来の危険に基づいて適用しなければならないとしている。判決文を書いた第9サーキットのシュローダー判事(Judge Mary Schroeder)によれば、互換性の条件が別個の契約条項というよりもライセンスの範囲に対する制限であると決定する以前に、マイクロソフト製Javaの著作権侵害によってサンが回復不能な損害を被ると地裁は推定すべきでないとしている。("We agree with Microsoft, however, that the district court should not have invoked the presumption of irreparable harm applicable to copyright infringement claims before it determined that the compatibility requirements were a limit on the scope of the license rather than independent contractual covenants.")。(裁判所が判断するのは善悪や黒白の判定等でない、立証責任を果たせなかった方が負けるという当然の帰結。)ただ、サンの主張の多くは認められているので、どちらの勝利と言うかは難しい。
 
関連情報:
Sun v. Microsoft, 99 C.D.O.S. 6799 (9th Cir.).
・Renee Deger, "Short Shelf Life Likely for Microsoft's Java Victory", The Recorder/Cal Law (August 24, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/A4820-1999Aug23.html
・「MSへの仮処分を破棄、差し戻し Java訴訟で」朝日新聞(1999年8月24日)
http://www.asahi.com/0824/news/business24003.html
・「サンとMSのJava訴訟で控訴裁判所が1審差し戻し判決」毎日デイリーメール・コンピューティング(1999年8月24日)
・ロイター発,日本語版:酒井成美,合原亮一「サン、Java訴訟で部分的に後退」Wired News(1999年8月24日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2968.html
 
 
3. レメルソン、訴えられる
 ローニュースネットワークより。
 故レメルソン(Jerome H. Lemelson)氏の特許は、同氏がコロラドの鉱業関連の会社に勤務している期間中に発明し出願したものだから、同士の取得したバーコード特許等の所有権は企業に属するとして、同氏の財団が本年4月23日に訴えられている。訴えた企業は、United States Metals Refining Co. (USMR)。当時の企業が合併にあったようで、その親会社らしい。想像によれば、以前レメルソンに訴えられた企業が1994年にこの鉱業会社に接触したとき、同社はレメルソンの存在(=ひょっとして「金鉱」?)を知った模様。ネバダ州には6年の出訴期限法(statute of limitations、いわゆる時効)があるので、安全のため提訴したのだろうとのこと。被告人には、レメルソン氏の代理人ジェラルド・ホージャー弁護士(Gerald Hosier)の名は上がっていないが、無記名で"attorneys and other representatives and agents of Lemelson."とされているらしい。
 レメルソン氏が会社に発明を譲渡する旨サインした契約書は出てきていないが、別にその証拠がなくても十分争えるらしい。
 
関連情報:
・Victoria Slind-Flor, "Patent Suit Puts Millions at Stake: Company claims work of bar code inventor Lemelson", The National Law Journal (August 24, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/practice/iplaw/news/A4800-1999Aug23.html
・Lemelson Patent Online(本件を含めレメルソンがらみの訴状が掲載されている)
http://www.lemelsonpatents.com/
United States Metals Refining Co. v. Lemelson Medical, Education & Research Foundation, No. CV99-02216 (Nevada's 2d Judicial District Court 1999).
 
 
4. 日本開発銀行の知的財産権担保融資に課題
 朝日新聞より。
 日本開発銀行がベンチャー企業を支援するため始めた知的財産権担保融資が人気を集めているが、融資先の企業が倒産して担保を処分しようとしても、特許などの買い手がなかなか見つからず資金を回収できない状態が続いているとのこと。
 
関連情報:
・「開銀の『知的財産権担保融資』に課題 国も制度を支援」asahi.con news update(1999年8月24日)
http://iij.asahi.com/0824/news/business24027.html
 
 
1999/08/23
 
1. 特許の有効性に疑問
 ずっと言われ続けている特許庁の審査の質に関する疑問。最近また頻繁に目にするようになった。気が付いたものを幾つか列挙。
 
関連情報:
・Greg Aharonian, "12 Internet credit card companies being 'extorted'." Internet Patent News Service 19990820 (August 20,1999).
(NetMoneyIn社の有する特許5,822,737号(1999年2月出願)は、第三者がオンラインでクレジット・カード取引を処理するための方法をクレーム。同社は同特許を使ってオンラインカード会社数社に50万ドル以上、0.25〜2.25%の実施料を請求。)
・Dan Gillmor, "Absurdity Can Be Patented -- the Patent Office Proves It." San Jose Mercury News (August 17, 1999).
(IPOデイリーニュースによれば、通常のオフラインビジネスの手法にオンライン的な要素を追加しただけで特許されていると警告)
 
・Julia King, "Net patents stir debate" CNN interactive (August 24, 1999)
(上記と同じ趣旨。有名なプライスライン社の特許5,715,314号「ネットワーク上の販売システム("network-based sales systems")」は、悪名高いらしい。ウェブ関連の特許庁での水準はかなり低いとのこと。)
http://www.cnn.com/TECH/computing/9908/24/patents.idg/index.html
・Lawrence Lessig, "The Problem With Patents" IDG.net, The Industry Standard (August 23, 1999).
(同じく。素人にも判りやすい説明。特許の無効を訴えるには平均120万ドルかかる。)
http://www.idg.net/go.cgi?id=154882
・日本特許庁総務課企画調査室「インターネット上の仲介ビジネスについて」(平成11年8月)
(電子商取引の説明だが、プライスライン社の特許の説明あり)
http://www.jpo-miti.go.jp/info/tyuukai.htm
 
 
2. 「プレイボーイ」「プレイメイト」は一般名称
 1999/07/23ひとりごとにてお伝えしたプレイボーイのサーチエンジン用キーワードを巡る争いの、仮処分申請却下がPTCJの最新号に掲載されている。随分古い(6月24日決定)のに、何で今頃掲載されるのか?
 
関連情報:
・"Playboy Enterprises Inc. v. Netscape Communications Corp., No. SA CV 99-320 AHS (EEx) (C.D. Calif. 6/24/99).
・"Using 'Playboy' Internet Search Terms Is Not an Infringing 'Use' of Protected Marks.", BNA's Patent, Trademark, and Copyright Journal (Aug 19, 1999).
 
 
1999/08/21
 
1. 米改正特許法案について(引き続き増補中)
 1999年8月4日に改正特許法案HR-1907「1999年米国発明者保護法(AMERICAN INVENTORS PROTECTION ACT OF 1999)」が、紆余曲折の末無事下院を通過した。まだ上院の通過と大統領の署名が必要であり、成立そのものが不明な上、将来変更される可能性もあるが、以下主要な改正点を挙げる。
 
 第1章 発明者の権利(Inventors' Rights Act)
・発明の振興に関わるサービス業(Invention Promotion Services、多くは詐欺まがい)に対し、契約等の開示を義務化し、このような業者の活動を規制するもの
・顧客、すなわち善意の発明者が業者に支払った(投資?)額以上を稼いだ実績の割合(あるのか?)等も含め、契約を公開
 12ポイント以上の太字で契約書表紙に「あなたには契約を中止する権利があります...」等の定型文を明記
・開示義務不履行に対する厳罰
・詐欺にあった発明者は、契約の無効と5000ドル以上の損害賠償および弁護士費用を民事訴訟により請求可能
 
 第2章 先使用の抗弁(First Inventor Defense Act)
・ビジネスの方法や関連商品(特に金融業、ソフト産業)は最近まで特許にならないと考えられていたが、CAFCによる1998年のステート・ストリート・バンク判決(State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc.)により特許可能であることが確認されたため、これらを従前から商利用していた米国の発明者と、その後に特許を取得した者との均衡を図るため、先使用による抗弁を認めるもの
・他人(後の特許権者)による特許出願日の1年以上前から、善意で(in good faith)米国において発明を現実に実施化(actually reduced ... to practice)した者、および出願日前から米国において発明を業として使用(commercially used)していた者に、抗弁が認められる
・非営利の研究機関、団体(大学、研究所、病院等)の使用も該当
 但し継続的使用、研究機関や非営利団体内での使用のみに制限
 以降の商業化や外部での使用には適用されない
・この抗弁が成立しても特許を無効とするものではない
・ビジネスの方法(a method of doing or conducting business)に限定し、物は対象外
・施行日から有効だが、施行日において係属している訴訟や従前の判決宣告(adjudication of infringement、同意判決(consent judgment)含む)には適用なし(203条)
 
 第3章 権利期間の保証(Patent Term Guarantee Act)
・以下の場合に日単位で特許権の存続期間を追加
 (1)出願から審査開始まで14ヶ月以上経過
 (2)出願人の応答から次のオフィス・アクションまで4ヶ月以上経過
 (3)特許発行料の納付から特許証発行まで4ヶ月以上経過
・上記と別に、特許庁で3年以上係属していた出願にも別途権利期間を追加(出願人の応答に3ヶ月以上要した期間分は除外、但し出願人の相当の注意にも関わらず応答に3ヶ月以上要した場合は該当せず)
・特許発行前に特許庁が出願人に延長期間を通知、不服申立の機会
 
第4章 外国出願済の米国出願公開(Publication of Foreign Filed Applications Act)
・原則、すべての出願を18ヶ月後に特許庁は公開
・出願人が外国で出願しておらず、かつPCT出願もしていない旨を請求すれば、公開されない
・出願人が後に外国出願した場合、45日以内に特許庁に通知する義務(違反した場合出願は放棄、不注意の場合は復活可能)
・請求により18ヶ月以前に公開可能
・公開により仮保護の権利(provisional rights)発生(404条)
 実施料相当(reasonable royalty)を請求可
 権利行使には、公開公報の提示によって侵害者が現実の通知(actual notice)を受けている必要あり
 国際出願で英語以外で公開されている場合は、英語翻訳文
 公開出願のクレームと特許後のクレームが実質的に同一の場合にのみ適用(...the invention as claimed in the patent is substantially identical to the invention as claimed in the published patent application)
 特許発行後6年以内に実施料相当額を請求
・本法施行日から1年後に有効(408条)
 
第5章 当事者系再審査任意手続(Optional Inter Partes Reexamination Procedure Act)
・「特許訴訟低減法(PATENT LITIGATION REDUCTION ACT)」という名が示す通り、再審査に第三者が参加できる機会を拡充して再審査制度の実効を図り、もって訴訟件数の低減を図るものである。現行の再審査制度は1980年に導入され、特許法第30章に規定されているが、再審査の手続開始後は第三者の参加が完全に排除されてしまうため、あまり活用されていなかった。よって、従来の査定系手続の再審査を残しつつ、新たにオプションとして当事者系手続による再審査を導入しようとするものである。
・第三者は当事者系の再審査を請求することができ、特許権者が特許庁に対し応答する度毎に書面により意見を述べることができる。加えて、特許が有効であると審査官が判断した場合には、当該決定に対し審判請求することも認められる。ただし、CAFCに控訴することはできない。また、特許権者に対する嫌がらせ的再審査を防止するため、再審査請求人は利害関係のある真の当事者を明らかにしなければならない(匿名不可)。
 さらに当事者系再審査に参加した第三者は、当該再審査手続中に提起した、あるいは提起することができた争点につき、以後の裁判所への提訴および当事者系再審査請求を禁じられる。同様に、再審査中で決定された事実に関しても、後に不服を申し立てることができない。但し、当事者系再審査の査定の時点で知り得なかった情報に基づき、誤りであることが証明された事実については除かれる。(507条)
・本法施行日から1年後に有効(508条)
 
第6章 特許庁の効率化(Patent and Trademark Office Efficiency Act)
・特許庁を商務省指揮下の一機関として独立させる
 管理運営は特許庁自身の責任で行い、予算管理は独立
 商務省長官による政策上の指針を除き、商務省職員の詳細な指示なしで運営
・組織体系の改革
 知的所有権専任商務省長官(Secretary of Commerce for Intellectual Property)、特許商標庁長官(Director of the United States Patent and Trademark Office)並びに長官代理(Deputy)、特許部門長(Commissioner of Patents)および商標部門長(Commissioner of Trademarks)
・特許公衆諮問委員会(Patent Public Advisory Committee)および商標公衆諮問委員会(Trademark Public Advisory Committee)の設立により、政策、目標、効率、予算、料金等の監督(614条)
・本法施行日から4ヶ月後に有効(631条)
 
第7章 雑則(MISCELLANEOUS PATENT PROVISIONS)
・特許実務家の手続における煩雑さを低減
・仮出願に基づく優先権主張における係属性の要件削除
 正規出願提出のための12ヶ月後の最終日が、土日、祝日の場合における提出期限の翌営業日までの延長(701条)
・電子出願、公開の承認(704条)
・103条(c)の適用除外規定に従来の102条(f)、(g)に加えて(e)を追加(707条)
 
関連情報:
・AMERICAN INVENTORS PROTECTION ACT OF 1999 (Engrossed in House)
(法案全文)
・3 versions of Bill Number H.R.1907 for the 106th Congress
(下院提出バージョン、下院報告バージョン、誤記修正バージョン)
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/z?c106:H.R.1907:
・H.R. 1907 as Passed by the House (8/6/99)
(PDFファイル。レターサイズで106頁もあるので、上記HTML版をお勧め)
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=106_cong_bills&docid=f:h1907eh.txt.pdf
・AMERICAN INVENTORS PROTECTION ACT OF 1999 -- HON. HOWARD COBLE (Extension of Remarks - August 05, 1999)
(1999年8月5日付議事録(Congressional Record)のE1788〜1793ページ。下院司法委員会報告書(House Judiciary Committee's report)が提出された後、H.R.1907法案の内、2章(先用権)、5章(再審査)、6章(特許庁)が補正されている。知的財産権小委員会コーブル議長(IP Subcommittee Chairman Howard Coble)によるこれらの説明。PDFファイルも利用可能。)
http://thomas.loc.gov/home/r106query.html
・H.R.1907 The American Inventors Protection Act of 1999
(IPOによる法案概略)
http://www.ipo.org/onepager.htm
・21st Century Patent Coalition
(”21世紀特許連合”。IPOによる1997年以降の改正法案関連の文書一覧。廃案になったものも収録。)
http://www.ipo.org/21CPCdocs106th.htm
・Michael J. Mehrman, "HR 1907 ? The American Inventors Protection Act of 1999: A Grand Compromise In The Making" Intellectual Property Today (August, 1999).
http://www.lawworks-iptoday.com/whatsnew.htm
http://www.lawworks-iptoday.com/current/mehrman.htm
(下院通過前のまとめ。)
・"House Passes Patent Reform And PTO Reorganization Bill", BNA's Patent, Trademark, and Copyright Journal (August 5, 1999).
(下院通過を報じたもの、下も同じ)
・BRENDA SANDBURG, "Patent Reform Redux: Though inventors remain opposed, Congress closes in on legislation to remake the PTO." IP Magazine (July, 1999).
(コーブル議長、ローラバッカー議員の顔が見える)
http://www.ipmag.com/monthly/99-july/sandburg.html
・Representative Dana Rohrabacher
http://www.house.gov/rohrabacher/
・ステート・ストリート・バンク事件
 State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc., 149 F.3d 1368, 47 USPQ2d 1596 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ipo.org/97-1327.htm
 
 
2. 既に通過した法案もあり
 上記法案が下院を通過した翌日1999年8月5日、クリントン大統領はIP関連の3つの法案に署名している。すべてハッチ議員が本年6月22日に提出したもの。
 
 1 「1999年 商標改正法」(Trademark Amendments Act of 1999 (S. 1259; Pub. L. No. 106-43))
・商標登録異議申立および取消理由に希釈化(dilution)を追加
・商標権侵害、希釈化の訴訟において連邦政府機関が免責される(federal immunity)との判例(プリファード・リスク事件)に対処するため、政府による免責の放棄を明文化
・トレード・ドレス侵害訴訟において、対象となるトレード・ドレスが機能的でないことの立証責任を原告側に課し、商標法(Lanham Act, 15 U.S.C.§1125(a))第43条(a)を改正(トレード・ドレスが機能的であれば保護を受けることができないが、その挙証責任が当事者のどちら側にあるか疑義があった)
 
 2 「1999年 特許料金保全および革新保護法」(Patent Fee Integrity and Innovation Protection Act of 1999 (S. 1258; Pub. L. No. 106-42))
・特許庁が印紙代(印紙は使ってませんが)で儲けた収入を、よその官庁に巻き上げられることのないよう規定
 
 3 「著作権法の一部修正」(copyright bill (S. 1260; Pub. L. No. 106-44))
・実体に影響のない形式的な補正(一昨年のデジタル・ミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act (Pub. L. No. 105-304))や著作権期間・音楽許諾法(Copyright Term and Music Licensing Act (Pub. L. No. 105-298))施行による書記上の誤記修正)
 
関連情報:
・"Three IP Bills Are Signed Into Law", BNA's Patent, Trademark, and Copyright Journal (Aug 12, 1999).
Preferred Risk Mutual Insurance Co. v. United States, 86 F.3d 789, 39 USPQ2d 1131 (8th Cir. 1996).(連邦政府には商標法の適用がなく、商標権者の商標「Preferred Risk」を連邦政府が使用しても侵害に該当しない)
http://www.wulaw.wustl.edu/8th.cir/Opinions/960613/953104.P8
・Home Page for Senator Orrin Hatch
http://www.senate.gov/~hatch/
 
 
1999/08/20
 
1. CAFC判決:一般名称を組み合わせた商標が、一般名称になるとは限らない
 標題の理由により、CAFCは米特許庁商標審判部(Trademark Trial and Appeal Board (TTAB))の審決を覆した。
 商標「生殖医学の協会」"Society for Reproductive Medicine"は、"Society"と"Reproductive Medicine"が一般名称(Generic)だからといって、組み合わせが一般名称になるわけでない。特許庁は、一般公衆が上記商標を全体として観察した結果、公共サービスに関連していると理解するおそれがあることを証明(し得る証拠を提出)していないとして、審決を棄却している。
...Specifically, we address the question of whether the PTO may satisfy its burden of proving a phrase as a whole generic, based solely on the genericness of the phrase constituents.
...To satisfy its burden, the PTO offered the following evidence: 1) a dictionary definition of the word "society," 2) third-party applications and registrations for marks containing (and disclaiming) the term "society," and 3) articles from Lexis-Nexis reflecting common uses of the term "reproductive medicine." The Board found this evidence sufficient to conclude that SOCIETY FOR REPRODUCTIVE MEDICINE was apt and "as such . . . a generic name of applicant’s services." Am. Fertility, slip op. at 6. This is not the correct test for genericness.
Rather, the correct legal test for genericness, as set forth in Marvin Ginn, requires evidence of "the genus of goods or services at issue" and the understanding by the general public that the mark refers primarily to "that genus of goods or services."
...Aptness is insufficient to prove genericness. The PTO must prove: (1) what the genus of the services the Society provides is; and (2) that the relevant public understands the phrase SOCIETY FOR REPRODUCTIVE MEDICINE to primarily refer to that genus of services provided by the Society. As the PTO produced no evidence at all of the public’s understanding of the phrase as it relates to the Society’s services, it clearly failed to carry its burden. The Board cannot simply cite definitions and generic uses of the constituent terms of a mark, or in this case, a phrase within the mark, in lieu of conducting an inquiry into the meaning of the disputed phrase as a whole to hold a mark, or a phrase within in the mark, generic.
 
合議体:ミッシェル、ガヤーサ、キューディ判事
判決文:ミッシェル判事
 
関連情報:
In re The American Fertility Society, No. 98-1540 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/InReAmFertSoc.8.19.99.htm
・"Fact That "Society" and "Reproductive Medicine" Are Generic Does Not Make "Society for Reproductive Medicine" Generic.", IPO DAILY NEWS (August 20, 1999).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
 
 
2. アップル、iMac関連訴訟連発
 アップル社はフューチャーパワー社(再建に向けて解体が進む韓国・大宇が母体)の「E-パワー」に続き(1999/07/02ひとりごと参照)、eマシーンズ(eMachines)がiMacのデザインを盗用したとして、同社のWindowsパソコン「e-one」の差し止めと懲罰的損害賠償求めてサンノゼのカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Northern District of California)に提訴した。eマシーンズの母体も韓国のTrigem ComputerとKorea Data Systems。
 業界筋は、今回のアップルの提訴を予想していた。もともとアップルの訴訟好きは結構有名だったし、同社は最近業績も好調だしで...
 
関連情報:
・"Apple Computer sues eMachines over PC design" SAN FRANCISCO, Reuters (August 19, 1999).(ここでもトレード・ドレスについて説明されている。専門家によれば、大宇のケースはかなり似ているのでなんだが、今回の事件はちょっと違うので難しいかもしれないとのこと。
...trade dress law is an area where the "devil is in the details,'' where companies can sue to protect the look of a product that is associated with its trademark.)
http://legalnews.findlaw.com/news/19990819/bctechusaapple.html&nofr=y
・鈴木 陽子「米Appleが米eMachinesを提訴---『iMacデザイン盗用』で2社目」日経ニュースセンター(1999年8月20日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/pc/79670
・Lisa M. Bowman,「米Apple,iMacのデザイン盗用の疑いでemachinesを提訴」ZDNet/USA(1999年8月19日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9908/20/apple.html
・中村 琢磨,「しまった,iMacに似てしまった?」ZDNet/JAPAN(1999年7月19日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9907/19/sotec.html
 
 
1999/08/19
 
1. 日本の司法制度改革
 本日付読売新聞「解説と提言」欄に、日本の司法制度改革に関する記事が載っていた。特に陪審制について、英米(特にアメリカ)の現状と日本に導入した場合の問題点等が簡潔にまとめられている。
 少なくとも、陪審制は特許訴訟には不向きと思うのだが、それに限らず十分議論、検討を期待したい。単純に何でもアメリカ式が優れているわけでないことは言うに及ばず、その国の風土にあった、実状に適した制度というのがあるはず。
(個人的には、陪審制は反対、夏時間導入には賛成しております。)
 
関連情報:
・「司法制度改革審 陪審制議論へ」読売新聞(1999年8月19日)
 
 
1999/08/18
 
1. ヒトと動物の掛け合わせは、特許にすべきか?
 おなじみ、ローニュース・ネットワークから。かなり長いが、読み応えはあった。
 人間と動物の掛け合わせを特許化しようと躍起になっている二人の科学者の話。これが実用化されれば、例えば新薬開発のモルモット等として有用とあるが、特許性以外にも倫理上の大きな問題がある。
 スチュアート・ニューマン氏(Stuart Newman)とジェレミー・リフキン氏(Jeremy Rifkin)は、キメラ(chimeras、2 つ以上の異なる遺伝子をもつ組織が一個体を形成したもの。ここでの例は、人間とチンパンジーの合いの子)の特許を米特許庁に出願したが、本年1999年3月18日に拒絶された。拒絶の理由は、担当審査官デボラ・クローチ氏(Deborah Crouch)による15ページの拒絶理由通知書によれば、「連邦議会は特許法101条制定の際、人間を特許対象として企図していなかったと特許庁は理解している。...然るに、出願人のクレーム発明は人間を含んでいるから、特許対象となる技術的事項とは見なされない。」だという。
 しかし、出願代理人パトリック・コイン氏(Patrick Coyne)によれば、特許庁は既にヒトの遺伝子成分をわずかに含んだ動物に特許を与えているという。例えば、ベイラー医科大(Baylor College of Medicine)の研究者に対し1997年に付与された特許は、マウスの受精卵子にヒトのDNA分子を插入して子宮に着床させ誕生したマウス(mouse created by injecting a human DNA molecule into a fertilized egg cell, then implanting the egg into the uterus of a female mouse)に関するものであった。
 一方、特許庁の特許政策副長官代理を務めるスティーブン・クーニン氏(Stephen Kunin, deputy assistant commissioner for patent policy)によれば、まず本願はクレームが広すぎること、さらに憲法修正13条で奴隷制が禁止されていること(!)、および本キメラ出願では動物のうちどれだけの割合で「ヒト」の要素が含まれるかという割合が明示されていないため、ヒトでない部分を極減した「ほぼヒト」に当たるものもクレームに含まれてしまうと述べている。もっとも、クーニン氏は何パーセントであればOKという具体的な線引きも明らかにしていない。
 ニュースによれば、故ポッター・スチュワート最高裁判事(Justice Potter Stewart)による猥褻(obscenity)の定義を採用しているようだ、とのこと。曰く、「ヒトをなすものが何であるか正確に言うことはできないが、ものを見れば判る(They can't say exactly what makes a human being, but they know one when they see one.)」
 これ以外にも、クレームに包含されると思われるキメラ胚(chimeric embryos)についても問題がある。コイン審査官によれば100%ヒトの胚は法上排されるべきだから、一部のみがヒトの胚は修正13条の保護を受けられるべきと主張することはちょっと難儀である。
 さらには、実施可能要件や新規性の問題も提起されている。実施可能要件については、記載が曖昧なため実際に生成するためには更なる試験が必要というもの(出願人側はこれを特許拒絶の「最後の拠り所("last resort" excuse)」と呼んでいる)。新規性については、いわゆるヤギ羊(geep、1984年にヤギ(goat)と羊(sheep)の胚を掛け合わせて本物のあいの子を生み出すことに成功した)の生成に類似するというもの。
 従来、この分野の特許性に関する指針があまりない。最高裁も連邦議会も明確な見解を述べていないのである。先のクーニン政策部門副長官代理も、「最高裁や連邦議会の沈黙を、特許して良しという同意と取るべきでない」としている。
 数少ない例として、1980年の有名なダイヤモンド対チャクラバーティ事件(Diamond v. Chakrabarty)では、当時の最高裁は5対4の僅差で、遺伝子操作で生成された石油漏れを吸収する微生物(micro-organism genetically engineered to consume oil spills)の特許を認めている。
 興味深いことに、今回の発明者であるリフキン氏は、チャクラバーティ事件で特許性に反対するアミカス・ブリーフ(amicus brief)に参加していた。しかし今回はもちろん、自己の利益がかかっているから特許性肯定派。実際、拡大する産業分野において優位に立とうという思惑がかなり見え隠れする。医療分野における臨床試験を想定してか、動物モデルは人間に似れば似るほど良い(humanoid test subjects)と言っている。マスコミ向けのPR宣伝も派手。この部分の特許法改正法案の提出も検討しているらしい。今のところは、世間の関心も低いが。
 
関連情報:
・Jenna Greene, "He's Not Just Monkeying Around: Battle to prevent the creation of half-human animals drops the PTO into a debate over law, science, and morality" Legal Times (August 16, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/A4544-1999Aug16.html
Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 206 USPQ 193 (1980).
http://laws.findlaw.com/US/447/303.html
 
 
2. 特許専門裁判所設立案
 随分言われていることだが、米のCAFCに倣った特許事件専門の裁判所設立案について、自民党(加藤派)の発表した「フロンティアは人間にあり――人が輝き世界に貢献する魅力ある日本」との政権構想にも言及されていた。
 asahi.com news updateより。
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 ...さらに郵便事業への民間の参入を推進するなどの郵政3事業の改革▽「市町村」の呼称を廃止して600程度の「市」を基礎的な行政単位とする地方自治改革▽知的所有権に関する紛争処理を急ぐために「特許裁判所」の創設を柱にした司法改革――などを盛り込んだ。
 
関連情報:
・「自民・加藤派、消費税の福祉目的税化を提唱」朝日新聞(1999年8月18日)
http://iij.asahi.com/0818/news/politics18005.html
 
 
3. 恐怖の大王、次は何にあてはめる?
 1999年7の月が終わっても、実はハルマゲドンの起こるのは8月だった!とまことしやかにささやかれていたノストラダムスの大(ウソ)予言。太陽系の惑星が十字を結ぶ「グランド・クロス」と、プルトニウム満載のNASA木星探査衛星カッシーニによって、8月18日にとんでもないことが起こる!と一部で盛り上がっていましたが...NASAが優秀であることが実証された。
 白状すると小生も小学生の頃はこの予言を真に受けて、非常に怖かった。正に杞憂。
 そのうちまた、誰かが言い出すのかな。実は9月だった、いやいや10月だったとか...
 
関連情報:
・共同通信, "Plutonium-powered Cassini probe zooms by Earth" CNN (August 18, 1999).
http://cnn.com/TECH/space/9908/18/cassini.flyby.02/index.html
・Where is Cassini Now?
http://www.jpl.nasa.gov/cassini/today/
 
 
1999/08/17
 
1.イリジウム、破産申請へ
 地球規模の携帯電話として注目を集めたイリジウムがチャプター・イレブン(chapter eleven、連邦破産法の第11章。自発的破産申請による会社更生を規定。日本の会社更生法に相当)を申請。山奥や砂漠でも繋がる電話というのは便利だろうと思っていたが、大柄な装置や価格ではなかなか採算性が厳しいのだろうか。
 毎日デイリーメールより。
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 66機の人工衛星を使って世界中のどこからでも通話可能な携帯電話サービスを行う米イリジウムが、日本の会社更生法に当たる米連邦破産法11条の適用をデラウェア州の米連邦破産裁判所にこのほど申請した。事業は継続する方針。
 同社は約15億5000万ドル(約1790億円)の融資の返済の目途がつかず、債務不履行(デフォルト)を宣言していた。事業開始の遅れや顧客の伸びが予想を大きく下回って1万数千人にとどまっているほか、新技術・衛星間通信のトラブルなどがこれに加わり、経営不振に陥ったことが理由。
 最大株主の米モトローラは「事業を再構築するため、今回の決定を歓迎する」として全面支援を続ける姿勢を表明し「30日以内に再建計画がまとまることは可能」との楽観的な見通しを明らかにした。2番目の株主で、京セラ、第2電電(DDI)などが出資している日本イリジウムも「申請で財政基盤が強化されれば、事業の成功は可能」とのコメントを発表した。
 
関連情報:
・「イリジウム 米連邦破産法適用を申請」Mainichi Daily Mail Mobile(1999年8月18日)
・イリジウム
http://www.iridium.com
 
 
 
1999/08/12
 
1. 「犯罪捜査のための通信傍受(盗聴)に関する法律案」
 毎日インタラクティブより。先頃成立した盗聴法に関するQ&A集。
 
関連情報:
・臺 宏士「法案の狙いや運用のポイント 成立すれば来年春にも施行へ」Mainichi INTERACTIVE DIGITALトゥデイ(1999年8月10日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/199908/10-1.html
・「--みんなで考えよう--よくわかる通信傍受法案入門」
http://www1.linkclub.or.jp/~ttom/373/
 
 
2. 法曹ジョーク
 アメリカではローヤー・ジョークというのは一分野として確立されているようだが、日本人には...
 
関連情報:
・法曹辛口ジョーク
http://www2.gol.com/users/takeda/jokes/index.html
 
 
1999/08/10
 
1. アメリカ法律事務所ランキング
 1998年度の稼ぎが大きかったロー・ファームのトップ200が発表。いわゆるジェネラル(特許に限らず法律全般を扱う総合法律事務所)ばかりだが、聞いたことのある事務所もちらほら。特許専門では、例えばフィネガンが135位に入っている。
 
関連情報:
・"The AmLaw 200 Gross Revenue: Firms to Watch" LawNewsNetwork (July 6, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/1999AmLaw200.html
 
 
1999/08/09
 
1. 米特許庁、家主の訴えに勝利
 現在の特許庁の家主である大手不動産、スミス社(Charles E. Smith Companies)が特許庁庁舎移転に反対して提訴していた事件につき、バージニア東部地区連邦地裁(District Court for the Eastern District of Virginia)は7月29日訴えを却下した。政府側の提出したサマリー・ジャッジメントの動議が全面的に認められたもの。
 スミス側は新庁舎の入札が公正でないとして公共建造物法および契約入札法(Public Buildings Act、Competition in Contracting Act)違反を訴えていたが、キャシェリス判事(Cacheris)は、行政記録によれば入札に関わる特許庁側の要求事項(Solicitation For Offers requirements)は妥当であり、政府は法に従っていると判断した。
 なお、特許庁HPの同じページに、8月4日下院を通過した改正特許法案のテキストへのリンクが掲載されている。
 
関連情報:
・"PTO Wins Procurement Lawsuit over New Facility"
 "House Passes Patent Reform Legislation"
http://www.uspto.gov/web/offices/ac/ahrpa/opa/bulletin/19990809.htm
 
 
1999/08/05
 
1. Rioを巡る争い、決着
 先日の高裁判決(MP3再生プレーヤ「リオ」は著作権違反防止法に違反しない)を受けて、当事者が合同で声明を発表。全米レコード協会(Recording Industry Association of America (RIAA))、アーチスト・レコード会社連合(the Alliance of Artists and Recording Companies (AARC))そしてリオ発売元のダイヤモンド・マルチメディア・システムズ社(Diamond Multimedia Systems Inc)の三者が、協力してオンライン音楽市場の開発を進めるというもの。具体的には、コピーが容易な反面、著作権管理ができないMP3フォーマットよりも、これの管理が可能な規格を業界団体SDMI(Secure Digital Music Initiative)を通じて策定し、展開していくというもの。
 しかし、ホットワイアード・ジャパンによれば、「各メーカーの思惑は、安全のためさまざまな選択肢を残しておきたいというにすぎない」という。
「SDMIに参加している会社の多くが、SDMIがうまくいくかについて疑問を抱いている..その理由の一部は、SDMI標準が複雑でテストされていない技術に基づいており、現実には使用が難しい可能性があるということ..もう1つの問題は、SDMI標準を構成する複数の技術の背後に特許が存在するため、標準が非常に高価になり、採用されない可能性があること」だそうである。
 
関連情報:
・"Lawsuits over MP3 Internet music player dropped", SAN FRANCISCO (Reuters) (August 4, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990804/bctechmp3.html&nofr=y
・「ダイアモンドとRIAAがMP3訴訟で和解」毎日デイリーメールニュース・コンピューティング(1999年8月5日)
・Chris Oakes,日本語版:平井眞弓,岩坂 彰「RIAAとダイアモンド社が和解」HotWired Japan(1999年8月4日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2848.html
 
 
2. 論理エミュレータ特許紛争、再発
 Mentor Graphics Corp.とQuickturn, a Cadence Companyの間の論理エミュレータ特許紛争は、6月末の和解で既に決着が付いたと思われていたが、7月下旬にMentor社がQuickturn社を特許侵害でデラウェア州の連邦地方裁判所に訴えた模様。Quickturn社の最新論理エミュレータ「Mercury」がMentor社の「Celaro」で使われている2件の特許を侵害しているとして、損害賠償とMercuryの販売禁止をMentor社は求めているもの。
 日経エレクトロニクス・オンラインEDAニュースより。
 
情報元:
・小島 郁太郎「米Quickturn社社長に聞く,懲りない米Mentor社には驚いた」日経エレクトロニクス(1999年8月5日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/edaonline/eachnews/99aug/990805quickturn.html
 
 
3. 技術論ばかりでは...
 もう一つ日経からネタを頂戴。
「技術立国日本の技術者に等身大の夢を」と題した飯塚哲哉ザインエレクトロニクス代表取締役のオピニオン。大いに考えさせられるところがあった。
 
情報元:
・飯塚哲哉「技術立国日本の技術者に等身大の夢を」
http://ne.nikkeibp.co.jp/IPJapan/kikou/990310iz.html
・「ザインエレクトロニクス代表取締役 飯塚哲哉氏『技術立国日本の技術者に等身大の夢を』に対するご意見」
http://ne.nikkeibp.co.jp/IPJapan/kikou/990527op1.html
 
 
1999/08/04
 
1. 特許法改正法案、下院通過
 本日午前に行われた投票で、賛成多数により無事下院を通過した模様。ケーブルテレビのC-SPANチャンネルで見えたらしい。
 次の戦いは上院に移る。
 ローネットワークにも詳細が記されている。これらによると、法案は結局H.R.2654でなく、H.R. 1907として、376対43の賛成で可決されている。
 
関連情報:
・Greg Aharonian, "HR1907 - yes 07 passes, HR2654 was a fake diversion", Internet Patent News Service (August 4, 1999).(かなりきてます。カネを多く出した方が勝ちだと。)
・1999年8月4日付IPOデイリーニュース
・Brenda Sandburg, "House Passes Patent Reform Bill", The Recorder/Cal Law (August 5, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A4116-1999Aug4.html
・AMERICAN INVENTORS PROTECTION ACT OF 1999 (House of Representatives - August 04, 1999)(賛成/反対議員が判る)
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/D?r106:35:./temp/~r106todNbi::
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getpage.cgi?dbname=1999_record&page=H6974&position=all
 
 
2. フェデラル・レジスターは最新情報が一杯
 ある問い合わせがあったため、最近のフェデラル・レジスター、要するにアメリカ版官報を調べた。ご存じの方も多いと思うが、今はインターネットで簡単に検索できる。patentをキーワードにして調べたら、色々出てきた。
 調べたかったのは、再審査に関する新ガイドライン。一昨年のポートラ・パッケージング事件のCAFC判決を受けて、改訂されたもので、どのような資料であれば再審査の請求が認められ得るかに焦点を当てている。
 これによれば、従前の審査で引用された文献に基づいて再審査請求をすることはできない(正確には、「特許性に関する新たな実体的問題(substantial new question of patentability)」を提起することができない)が、
「これに対し、ある先行技術につき、引用はされたものの、クレームの特許性に対する関連性が従前これに関して特許庁で行われたいずれの審査手続でも検討されていない先行技術に基づいて、特許庁は再審査を命じ開始することができる。」とのこと。
  In contrast, the PTO may order and conduct reexamination based on prior art that was cited but whose relevance to patentability of the claims was not discussed in any prior related PTO proceeding.
 また、事例が幾つか上げられており、例えば外国語文献が従前の審査で引用されていた場合、当該文献の完全かつ正確な英語翻訳文に基づく再審査請求を禁じるべきでないとなっている。
  Another example involves foreign language prior art references. If a foreign language prior art reference was cited and discussed in any prior PTO proceeding, Portola Packaging may not prohibit reexamination over a complete and accurate translation of that foreign language prior
art reference. Specifically, if a reexamination request were to explain why a more complete and accurate translation of that same foreign language prior art reference actually teaches what is required by the patent claims, it may be appropriate to rely on the foreign language prior art reference to order and/or conduct reexamination.
 その他、112条第6パラのミーンズ・クレームに関する暫定補足基準も7月31日付で載っていた。できればレポートしたい。
 
情報元:
・"Guidelines for Reexamination of Cases in View of In re Portola Packaging, Inc., 110 F.3d 786, 42 USPQ2d 1295 (Fed. Cir. 1997)", Federal Register: March 31, 1999 (Volume 64, Number 61)
「ポートラ・パッケージング事件による再審査のためのガイドライン」最終版(おそらく、次回のMPEP 第2200章に編纂されるでしょう)64 FR 15346.
・"Interim Supplemental Examination Guidelines for Determining the Applicability of 35 U.S.C. 112 para. 6.", Federal Register: July 30, 1999 (Volume 64, Number 146)
・"1995, 1996, 1997, 1998 and 1999 Federal Register" via Government Printing Office
http://www.access.gpo.gov/su_docs/aces/aces140.html
 
 
1999/08/03
 
1. 「ビジネスモデル特許」は公正か?
 ホットワイアード・ジャパンが、業界人ニュースウォッチのコーナーで、「『ビジネスモデル特許』はフェアか?――ソニーが知的財産権戦略を強化」というタイトルのディスカッションを展開。(昨日も書いたが、このご時世でもソニーは強気だ。下向きの時代だからこそ、アグレッシブな戦略が注目される。)
 この掲示板、業界人しか発言できない(但し特許の専門家ではない。プロがこの議論に入ると、例えば「ステートストリートバンク事件が云々」と法技術的なものなってしまうかも知れない。そういう意味で「専門家でない」外部の方々が語る特許への意見は興味深かったが...)ので、若干意見が偏る可能性があるが、実案と特許を取り違えたり何やらで、特許の理解はこんなものかと個人的には少々がっかり。(よくご存じでない方の議論という色眼鏡で見ないように自戒。)しかし皆さん非常に否定的。というか、あまりに正論すぎる。
 アイデアの独占による市場の締め出しを懸念されるのはよく判るが、だからこそ守りから攻めに転じたソニーの戦略を私は評価したい。みんなが(競業他社が)決められた法の枠内で現実にやっていることを、法がおかしい、制度がおかしいとぶーたれても、どうしようもない。そんな暇があったら、制度をよく研究して他社に先んじるべきではないか。現行の土俵でうまくやる方法を見つけ、その上で制度の矛盾を訴え、見直し、改正等を働きかけていく。私は学者でも政治家でもない只の実務家の一人なので、是非を問う前に実務をまず考える。そうすると、現時点ではビジネスモデルの積極的な出願を検討すべき、となりソニーの戦略に同意する。クロス・ライセンス等の防御的意味合いからも有効な特許をできるだけ取得することが第一で、そのため専門家を各部署(特許部以外の「現場」)に派遣して、出願できる可能性のある技術や方法などを徹底的に洗い出す。
 現状を十分理解し、対応策を検討し実践した上で制度の是非を問うなら、ご一緒に考えさせていただきます。(←何様のつもりだ!)
 
情報元:
・「『ビジネスモデル特許』はフェアか?――ソニーが知的財産権戦略を強化」Hot WIred Japan(1999年8月)
http://www.hotwired.co.jp/nwt/
 
 
1999/08/02
 
1. 特許法改正法案、本日投票→流れた
 先週末に届いたGreg Aharonian氏の「Internet Patent News Service」によれば、新法案HR2654が金曜日に提出された(HRとは、その名の通り下院が提出した法案(上院も法案提出は一部を除いて可能だが、下院の方がメジャー?)を指し、数字は提出順の番号)。これは従前のHR1907とほぼ同じで、第6章を省いたものらしい。第6章は特許庁の政府公社化に関する法律で、成立すれば庁予算を他の政府機関に巻き上げられることなく、自由な予算運用が実現できると期待されていた。つまり、これを捨てても今回の特許法改正案を通したいという信念があるということ。
 本日付のIPOデイリーニュースでは、この法案の投票が今日らしい。なんでも「suspension of the rules procedure(関連規則の適用留保手続?)」で行われることになったため、通常よりも討論が制限され、法案の補正もなく、2/3の賛成があれば可決されることになる模様。詳細は、本日付のインターネット・パテント・ニュース参照。
...等と書いていたら、結局本法案は棚上げになった模様。
...しかし、本日(1999年8月3日(火))再びチャレンジか?
 
関連情報:
・Greg Aharonian, "PATNEWS: ALERT!!!! Latest attempt to sneak patent reform bill", Internet Patent News Service (July 31, 1999).
・Greg Aharonian, "HR2654 to be voted on Monday at 2 PM; UCITA approved", Internet Patent News Service (August 2, 1999).
・IPO Daily News, IPO (Aug. 2, 1999).
・Greg Aharonian, "HR2654 shelved - US patent reform from a European perspective", Internet Patent News Service (August 3, 1999).
 
 
2. SCE社長、久多良木健氏、IPを語る
 毎日デイリーメール・コンピューティングより。
 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)新社長、久多良木健氏のインタビュー。
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−−中古販売での何らかのルールつくりをすることは考えているか。
 久多良木社長 ノーコメント。テクノロジーが変わる中で昔の法体系では説明できないものが出てきている。意思を持って今後守っていくのはIP(知的所有権)。守られるものとして著作権があり、その回りで競争していく。
 
−−IPではプレステエミュレーションソフトを発売した米コネクティクスの訴訟が継続している。
 久多良木社長 コネクティクスに対するわれわれのポジションは明快。著作権を侵害されたということを主張している。具体的にはわれわれのライブラリーやコードをコピーしたから差し止めなさい、ということだ。よく調べると特許権も侵害しており、この点でも主張している。われわれのソフトがどこかでコピーされたら、徹底的に戦う。それは絶対にやめない。
 コネクティクスからは最初、こういうものを出したいという打診があった。しかし「著作権侵害だからだめだ」と答えたところ、先方がそのまま出してしまった。先般の米国の裁判でもコードについてはコネクティクスにIP侵害があるということが認められているわれわれのライブラリーやコードをコピーせずにソフトを互換できるか、という点では理論上では可能性がある。しかしテレビやゲームはリアルタイムシステムであり、非常に難しいだろう。
 
情報元:
・Kojima Noboru(MainichiShimbun)、Matsuzawa Keisuke(Staff Writer)「『プレステは世界に広がる情報チャンネル』キーパーソンに聞く 久多良木健SCE社長」毎日新聞(1999年8月2日)
 
 
1999/07/30
 
1. 特許庁商標副長官ノミネート発表
 7月28日、クリントン大統領はInternational Trademark Associationのトップであるアン・チェサール氏(Anne H. Chasser)を副長官として指名した。副長官は特許と商標部門の二席がある。この内、商標の副長官(Assistant Commissioner for Trademarks at the Patent and Trademark Office)として同女史が選ばれた。特許部門は空席のまま。
 
関連情報:
・"President Clinton Nominates Anne Chasser as Assistant Commissioner for Trademarks" (Jul 28, 1999).
http://www.uspto.gov/web/offices/ac/ahrpa/opa/bulletin/19990728.htm
 
 
2. AT&T対エクセル事件、上告に挑む
 「月刊国際法務戦略」7月号は特許の特集で、AT&T対エクセル事件が2つの記事で取り上げられている。コンピュータ・プログラムの特許性といえば、ステート・ストリート・バンク事件ばかりが取り上げられているが、その後に出たAT&T事件の方が実は重要なのでは、という気もする。
 ステート・ストリート事件では、結局物の発明として理解されていたが、AT&Tでは方法の発明についても特許の保護対象として認められた。これでプログラムに対する障壁がほとんどなくなったといえるし、CAFCの(プログラムに特許性を認めるという)方向性が確認されたとも捉えられる。
 さて、件のAT&T事件で敗れたエクセル側が最高裁に対し上告を申請した(petition on a writ of certiori)。注目を集めたステート・ストリート事件さえ、最高裁はコメントなしで却下したくらいだから、AT&T事件が取り上げられる望みは薄いと思うが。(上告受理は最高裁の裁量で、判事9人の内4人の賛成が必要。上告が取り上げられる確率は1%程度らしい。)
 
情報元:
・1999年7月29日付BNA's PTCJ
Excel Communications Inc. v. AT&T Corp., No. 99-95 (U.S. 1999, review sought).
AT&T Corp. v. Excel Communications, Inc., 172 F.3d 1352, 50 USPQ2d 1447 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/AT&TvExcel.htm
 
 
1999/07/29
 
1. 医薬品メーカーの談合?
 薬屋さんのことは詳しくないが、新薬開発(体力が要るらしい)に力を入れる大手企業と、それを追いかける中小企業(あたった薬と似た薬を安く売る)があるという話を聞いたことがある。それと同じ話なのかどうか判らないが、ドラッグストア・チェーンが医薬品メーカ同士の協定を独占禁止法違反であるとしてマイアミに訴えていると、ローニュース・ネットワークで報じられている。
 これによると、新薬の開発には10年以上の歳月と何百万ドルもの開発費用がかかることは珍しいことでないが、一方でこれらの新薬の特許権が切れた後に、後発組(small generic company)がこれをコピーすることは半分以下の手間でできるそうである。特許権は出願から20年で失効するし、製品化や許認可にも時間がかかってしまうので、先発組の負担はさらに大きくなってしまう。これではたまらないと、先発の大手メーカーは後発組の中小メーカーを抑える策を講じる。特許権侵害訴訟("often frivolous"らしい)を訴えるところもあれば、コピーを作らないようお金を払うところもある。しかし、後者の方法では、消費者からすれば選択の幅が減り、高いブランドものの薬を買わされることになってしまう。
 消費者の被る不利益をバックにして、ドラッグストア・チェーンの連合が今回提訴した訳である。原告は、以下の通り。
Walgreen Co. in Deerfield, Ill.; Eckerd Corp., in Largo, Fla.; the Kroger Co., in Cincinnati, Ohio; Albertson's Inc., in Boise, Idaho; the Stop & Shop Supermarket Co., in Quincy, Mass.; and Hy-Vee Inc., in Des Moines, Iowa.
 被告は、以下の通り。
Abbott Laboratories, Zenith Goldline Pharmaceuticals Inc.(マイアミを拠点とするIvax Corp.の子会社)Geneva Pharmaceuticals
 訴えによると、アボット社はゼニス社およびジェネバ社と違法な協定を交わし、アボット社の高血圧用Hytrinのジェネリック・バージョン(generic version)を販売しないよう金を払ったというもの。このため小売店は高いブランド品(brand-name)を買わされ、被害を受けたとしている。ジェネリック(※一般名称の意だが、ブランド品に対して商標登録を受けていない薬品を指すようだ。"copycat version of the drug"との呼び方もしている)がもし市場に出ておれば、価格は少なくとも30%安くなったであろうとのこと。もし独禁法違反の主張が通れば、三倍賠償もあり得る。
 
関連情報:
・Susan R. Miller, "A Bitter Pill: Eckerd, Walgreen chains file antitrust suit against Abbott Labs, Ivaxunit", Miami Daily Business Review (July 29, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A3882-1999Jul28.html
・リーダーズ・プラス英和辞典
「prescription drug」とは、医師の処方箋がなければ入手できない薬剤をいい、これに対し「OVER-THE-COUNTER」または「OTC」「O.T.C.」とは、医師の処方不要の売薬を指す。
 
 
1999/07/28
 
1. 著作権を担保にして融資を受ける
 だそうである。日経BizTechニュースセンターより。
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 ソフトハウスのビー・ユー・ジー(BUG、本社:札幌市)は、このほど同社が持つ知的所有権を担保に、日本開発銀行から融資を受けたと発表した。開銀は直接融資に加えて、他の民間金融機関からBUGへの融資に80%の保証をする。開銀による直接融資と保証の組み合わせが、知的所有権に適用されるのは初めてという。
 BUGが担保としたのは、同社のISDNルーターに搭載するファームウエアのプログラム著作権。BUGは次期ルーターの開発に必要な資金1億円のうち、この担保により開銀から5000万円を調達した。さらに、残り5000万円の資金を地元金融機関の札幌信用金庫から借り入れたが、その5000万円の80%について開銀の保証を得た。
 通常、知的所有権を担保にした開銀からの融資は、総資金の50%。残りは企業が独自に調達する必要がある。一方、不動産などを担保にした場合には、融資プラス保証という形で与信枠を50%以上に拡大することが、よく行われていた。今回のBUGの資金調達は、この与信枠の拡大を、知的所有権の担保で初めて実現したことになる。
 
情報元:
・松尾 康徳「BUGが知的所有権担保に開銀から融資--保証も組み合わせた初ケース」日経BizTech(1999年7月28日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/speed/78314
 
 
1999/07/27
 
1. ニュー・コート社、インクジェットプリンタの互換カートリッジ訴訟でHPに敗れる
 
 互換カートリッジの問題は、プリンタ製造メーカー各社が頭を悩ませている点。
 各社とも、プリンタ本体の価格を安く抑える代わりに、交換用インクカートリッジを売って稼ごうというという戦略にシフトしている模様(ポラロイド・カメラの本体とフィルムの関係と同様?)。詰替用のインクとして(安く)売るのでなく、インクの詰め替えができない仕組みにして、インクを封入したカートリッジごと(少々高く)販売する訳である。もちろん、メーカーは基本的に自社製の純正カートリッジの使用しか認めておらず、各社のプリンタ・カートリッジには互換性がない。
 しかしながら、互換性のあるインクカートリッジを安く販売しようとするメーカーがいては、儲けを食われてしまう。そこで、プリンタメーカーは特許や意匠、商標などによって互換カートリッジを作れないように苦慮している。
 一昨年、ヒューレット・パッカード社は互換インクカートリッジを製造していたリピート・O・タイプ・ステンシル社との裁判で敗れた。CAFCは、インクの詰め替えが特許品の違法な再生(impermissible reconstruction)でなく、合法な修理(permissible repair)に相当すると判示している。
 しかし、今回は別の互換カートリッジ・メーカーであるニュー・コート社(Nu-Kote Holding Inc.)に対し、HP社は勝利を収めている。3件の特許権侵害、及び3件の商標権侵害(不正表示と誤解を招く表示(false and misleading statement))により、HP社はサンノゼのカリフォルニア州北部地区連邦地裁において、200万ドルの損害賠償(陪審評決か?)を勝ち取ったと報じられている。
 ニュー・コート社は各プリンタメーカーから訴えられており、その戦略については非常に興味深い。日本人の間では、特にセイコー・エプソンとの事件が注目を集めた。この事件は昨年CAFCでヒアリングが行われ、現在審理係属中の模様。
 この事件は地裁レベルで、エプソンの発明者が英語で書かれた宣言書(declaration)の内容を理解せずにサインしたことが問題となって特許が無効にされたと報じられ、大きく話題になった。この件については、いずれ詳しくまとめたい(とずっと思ってます)。
 
関連情報:
・Alex Wellen, "HP Wins Inkjet Printer Lawsuit: Case alleged that inkjet printer refiller infringed on HP patents" (July 23, 1999).
http://www.zdnet.com/zdtv/cybercrime/news/story/0,3700,2300930,00.html
・"HP WINS ROUND IN PRINTER BATTLE S.J. JURY FINDS NO ANTITRUST VIOLATIONS", SAN JOSE MERCURY NEWS (July 23, 1999).(本文は有料。これによるとニュー・コート社は破産しているらしい)
http://www.mercurycenter.com/resources/search/
 
 
2. コンパック、eマシーンを訴える
 こういうメジャーな事件はここで書かなくともあちこちで報じてくれるので、詳細はそちらの各ニュースサイトでご覧下さい。
 面白かったのは、ニュースの見出し。英語の言い回しはしゃれてるなーといつも感心させられる。題して「勝てぬなら、訴えてしまえホトトギス」
 安価なパソコン販売に苦戦を強いられているコンパックは、商売で勝てないなら訴訟にもってけ、とばかりに韓国のトライジェム(Trigem、三宝)関連会社、eマシーンズを13件の特許権侵害で訴えた。アナリストによれば、「パソコンメーカーはホットな競争相手をクールにする(黙らせる)戦略として特許権侵害訴訟を検討中」とのこと。
Observers say the PC maker may be trying a tried and true strategy to cool a hot competitor by alleging patent infringement.
 
関連情報:
・"Can't Beat'm? Sue'm: Compaq sues eMachines over patents", FINDLAW NEWS FindLaw Legal Grounds (July 27, 1999).
http://LegalNews.FindLaw.com
・Robert Lemos, "Compaq sues eMachines over patents: Observers say PC maker may be trying a tried and true strategy to cool a hot competitor.", ZDNet (July 26, 1999).
http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2302857,00.html
・Joe Wilcox,日本語版:矢倉美登里「コンパックが特許侵害でイーマシーンズなどを提訴」CNET Japan Tech News(1999年7月26日)
http://japan.cnet.com/News/1999/Item/990727-7.html?rn
 
 
1999/07/26
 
1. CAFC判決:WMSゲーミング社対インターナショナル・ゲーム・テクノロジー事件
ミーンズ・クレームの文言侵害でなくても、均等論侵害あり(作成中)
 
 刻々と変わるCAFC判決。先日のオデティックス社対ストレージ・テクノロジー社事件(Odetics, Inc., v. Storage Technology Corp.)に続き、またもやミーンズ・プラス・ファンクション・クレームと均等論侵害の話。
 両者の違いは、以下の2点に集約されている。
 (1)「機能」について
ミーンズ・クレームは同一性を要求
均等論は実質同一で足りる
 (2)侵害判断時
ミーンズ・クレームでは特許成立時(出願時のような気がしないでもないが、裁判所はクレームの範囲が確定する時期ということで、特許成立時としている)
均等論では侵害時
 以前は、ミーンズクレームの文言侵害が成立しない場合は、均等論侵害は半ば自動的に不成立という考えもあった
(例えば、既に文言侵害の分析時に均等物を検討しているので、さらに均等論侵害を検討する際には均等の範囲はそれ以上広がらない→均等物の均等物はないという意味で。
 あるいは、(クレームされた機能を果たす明細書中に開示された構造と)均等な構造がイ号中に発見できないという状況では、いずれの侵害も成立し得ない。チューミナッタ事件参照。)
 だがしかし、このごろは両者の違いが活発に議論されており、ミーンズクレームで非侵害でも均等論で侵害とされるケースが出てきている。(例えば、AIサイト社対VSIインターナショナル社事件での、「イ号装置は、特許法112条第6パラグラフに基づく文言上の侵害なく、均等論に基づく侵害を生じることができる。なぜなら、均等論は実質的に同一の機能を要求するのみであり、112条第6パラのように完全に同一の機能を要求していないからである。」
 Al-Site Corp. v. VSI Int'l, Inc., 174 F.3d 1308, 1320-21, 50 USPQ2d 1161, 1167-68 (Fed. Cir. 1999) (an accused device can infringe under the doctrine of equivalents without infringing literally under 35 U.S.C. § 112, ¶ 6 because the doctrine only requires substantially the same function, not identicality of function as in section 112, ¶ 6.)
(なお、Alサイト事件ではミーンズ・クレームでないと解釈されており、通常の均等論侵害が認定されている。)
 
 WMSゲーミング事件は、正に上記にあてはまるケース
=112条第6パラのミーンズ・クレームの「文言侵害なし」だが、ミーンズ・クレームの「均等論侵害あり」と認定
 今回は上記(1)が問題になっている。ずばり、
・機能が同一でなかったから文言侵害なし、
(Because the WMS 400 slot machine assigns and selects combinations of numbers rather than single numbers, it does not perform a function identical to that of claim 1 of the Telnaes patent. Accordingly, although it has equivalent structure, the WMS 400 slot machine does not literally infringe the claim.)
・でも機能が均等だから実質的な差がないとして均等論侵害が成立するという、極めてシンプルな理由付け。(we have reversed the district court's holding of literal infringement based on a lack of identity of function. Consequently, unlike Chiuminatta, the accused device in this case may still infringe under the doctrine of equivalents.)
 こういう事例は、理屈上はあっても実際上はあまりないだろうと思われていたが、しっかり現実のものと相成った。気の毒な被告企業は、故意侵害のため合計3300万ドルの損害賠償を課される可能性もあり。
 
担当合議体:リッチ、レーダー、シャル判事
判決文:シャル判事
本件の技術:カジノで使うスロットマシンの当たり目の並び方に関する特許。原告の特許ではテレビ画面上にスロットマシンの回転ドラム(reel)の映像が出てくるバーチャル・リール・マシン。いかにして当たりの確立を低くするかという、カジノ側にとっては非常に重要な命題を解決したもの。(我々にとっても、ひじょーに興味ある問題!?)
 当たりの確立を減らすには、一般には組み合わせのパターンを多くする。例えば回転ドラムの目の数を多くする、ドラム数を増やす等。しかし、これらは装置の大型化を招く。
 この問題を解決するために本発明は、各ドラムの目の数、つまりドラムが停止する位置の合計よりも大きな数を仮想的に創出して、組み合わせを増やした。
 例えば1のドラムに停止位置が20あるとする。このドラムが3列あれば、組み合わせの数は20×20×20=8000通りとなる。ここで、ドラムの停止位置よりも大きい数、例えば倍の40を設定し、1〜40の数字を対照表に従って各停止位置に割り当てる。割り当ては均一としないのがミソ。例えば停止位置が「7」の目には1〜40の内、1だけとし(確率が1/20から半分の1/40に下がる)、その分「チェリー」には2〜7の6個を割り当てる(確率は1/20から6/40=3/20と3倍になる!)。全体の組み合わせは40×40×40=64000通りとなる。「777」の出る確率は、3/8000から3/64000と8分の1になる計算だ。もちろん、どの組み合わせでドラムが停止するかは、予め決められている。機械的にドラムを回転させてランダムに停止させるのでなく、制御回路が予め各ドラムにつき1〜40をランダムに選び、これに従って停止位置を決定する。そして決定された停止位置をTV画面上であたかも回転しているように表示するのである。このからくりによって、装置を大きくすることなく特定の(当たりの)確率のみを下げることが可能となる。
 以下、詳細は追って補充...
 
関連情報:
・IPO Daily News
WMS Gaming Inc. v. International Game Tech., __ F.3d ___, ___, 51 USPQ2d 1385, 1400 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/WMSGamingVItlGame7.20.99.htm
 
 
2. 牧野二郎弁護士、インターネットを語る
 かなり前の記事だけど、思わず拍手したくなる内容だったので...
 インターネット弁護士協議会代表であり、ネット関連の法律問題に明るい希有な弁護士、牧野二郎氏へのインタビュー。「インターネットはオープンであるべき」との信念の下、具体的な考えを判りやすく綴っておられる。
 個人的に、インターネットの規制問題に真剣に取り組んだことはない(だからえらそうに意見できる資格はない)が、情報の共有化という考えには全く同感。そのためのツールとしては、インターネットが非常に有用だと思って、実践しようと頑張ってるつもり。
 牧野弁護士の見解、
・法律家による情報の独占に反対し、情報の共有化を推進
・物書きで生計を立てるのでない立場の人間(要するに一般の法律家)が書いた論文は、変に著作権で縛るよりも、無償で公開してもっと広く役立てよう、という案は「素晴らしい!よくぞ言って下さった!!」と応援したくなる。
 その他、インターネット裁判所を開設してADRとして機能させるなど、ユニークなアイデア。
 VIP for Alternative Valueより。
 
情報元:
・「牧野二郎 インタビュー」HOTWIRED JAPAN -Speak Out! (最終更新:Last Update 1998年9月22日)
http://www.hotwired.co.jp/speakout/interview/980921/body_01.html
・「個人のネット発信に揺れた東芝」YOMIURI ONLINE bit by bit
http://www.yomiuri.co.jp/bitbybit/bbb07/972106.htm
 
 
2. 経団連の産学官共同プロジェクト
 一生懸命なのは判りますが、何か「昔のアメリカの成功例に学べ」みたいな感じがとても強い気がする。オリジナリティというか、日本らしさというか、気概みたいなものって、言えないのでしょうか。
 
関連情報:
・「わが国産業の競争力強化に向けた第2次提言−『産学官共同プロジェクト』構想の推進とインフラの整備を中心に−」(社)経済団体連合会(1999年7月6日)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol234/honbun.html
 
 
1999/07/23
 
1. サーチエンジンを巡るプレイボーイの戦い
 プレイボーイ社がサーチエンジン各社を訴えた事件の途中経過。エキサイト、ネットスケープ等の検索画面で「プレイボーイ」「プレイメイト」のキーワードを入力すると、プレイボーイ社の競業他社(もちろんその手の企業)のバナー広告が表示されるのは、同社の商標の不正使用(ただのり)であるとして、これらの行為の一時使用差し止めを求めた仮処分申請(request for a preliminary injunction)が、却下された。
 6月24日の決定において、カリフォルニア州サンタアナに位置するカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所の裁判官ストッター判事(Judge Alicemarie H. Stotler)は、「プレイボーイ」は確かに同社の登録商標であるが、同社の所有物以外の(この手の)ものを意味する一般名称であるとし、これらすべてを同社が独占するものではないとしている。そして、エキサイト等によるこれらの名称の使用が必然的に商標の業としての使用(use in commerce)に該当することを、プレイボーイ社は立証できなかったと判断した。同判事によれば、斯かる商標の使用が出所の混同を生じるという証拠をプレイボーイ社は提示できていないという。同判事は比較広告に例えて説明している。
 高速道路を車で走る運転手がファーストフード・レストラン(例えばマクドナルド)を探している。看板が見えたので、高速を降りた。レストランに着くと、その隣に次のような看板がある。「もっとおいしいハンバーガー!(例えばバーガーキング)次の交差点」このような状況で、マクドのレストランとバーキンの看板が立つ土地の所有者が同じであると仮定した場合、地主はマクドに対して客を惑わせた責任を負うのか?いうまでもなく、地主はサーチエンジンの提供者であり、マクドは原告を指している。
 公判でも原告側不利と伝えられている。プレイボーイ社は、第9巡回裁判所に控訴する意向。
 1999/06/11ひとりごと参照。
 
関連情報:
・CARL S. KAPLAN, "Judge Rejects Playboy Request in Search Engine Suit", New York Times (July 23, 1999).
http://www.nytimes.com/library/tech/99/07/cyber/cyberlaw/23law.html
 
 
2. デジタル・ミレニアム・アクトという武器
 東芝サポート問題発言事件が巷を賑わせている。同社に個人的な恨みはないが、販売店やメーカーのカスタマー・サポートに不快な思いをしたことが多い人間としては(人間がまだできていない..)、これを機にカスタマーサポートの見直しが進められることを切に願う。サポートにされたことをありのままに公表されて困るようでは、まずいんじゃないでしょうか。(もし「事実」を公表されても何も困らない、事実を見れば逆にユーザー側に非があると誰もが思えるような自身をもったサポート体制にして下さい!)
 さて、海の向こうでは誹謗中傷サイトの削除に、先頃成立したデジタル著作権法(Digital Millennium Copyright Act)が適用されているという話。とある宗教団体(?)を誹謗した個人のホームページが、著作権法違反にあたるとして同ページの削除をプロバイダーに求められている。このサイトの運営者は、同団体の講演を一部録音し、「極秘」のアンケートを入手し、これらをネタに厳しいコメントを書いて公開している。運営者(女性)の言い分では、これらは法的に認められた引用・批評のための「公正な使用(fair use)」であるが、団体側が著作権法違反として訴えたため、彼女が異議を申し立てない限り、プロバイダーはサイトの一部を削除しなければならないという。
 1998年11月に発効したデジタル著作権法では、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の責任が明確にされている。これによると、著作権法違反の疑いで訴えがあった場合、プロバイダーは著作権法違反でないことの証明を待たずに、斯かるコンテンツを削除する必要があるとのことである。
 
関連情報:
・Janelle Brown, "Copyright -- or wrong? :The Church of Scientology takes up a new weapon -- the Digital Millennium Copyright Act -- in its ongoing battle with critics.", Salon Technology (July 22, 1999).
http://www.salon.com/tech/feature/1999/07/22/scientology/index.html
・Digital Millennium Copyright Act
http://www.salon.com/21st/feature/1998/11/09feature.html
 
 
3. ノイズレス検索システム技術
 オンライン検索で出てくる不要な情報(「ゴミ」、「ノイズ」と呼ばれるもの)を低減する技術が開発されたそうである。松下さんなので、技術の発表が先行して実用化はもうちょい先なのかな、と邪推してしまうが、実現されると大変便利だから期待。
 PC WeekOnline Japanより。
====================================
 松下電器産業は7月22日に、全文検索の検索ノイズを軽減できる技術として、文章から自動生成した単語リストを辞書代わりに用いて、新しい単語が出てくる文章であっても高精度に分割できる字面解析型単語分割方式を開発したと発表した。
 同方式を利用することで、新しい単語が現れることの多い新聞・雑誌記事やホームページの検索、専門用語辞書を必要とする特許や学術文献の検索など、幅広い分野で辞書を必要としないノイズレス全文検索システムを構築できる。
 同社では、高速全文検索ミドルウェア「PanaSearch」で2000年度に実用化を目指す。
 
関連情報:
・「松下電器産業が全文検索システムの検索ノイズを大幅削減する技術を開発」PC WEEK/JAPAN(1999年7月23日)
http://www.zdnet.co.jp/pcweek/news/9907/23/99072310.html
・松下電器産業
http://www.panasonic.co.jp/panasonic-j.html
 
 
1999/07/22
 
1. 一太郎最新バージョン
 自分と同じ徳島県生まれの純国産、ということで勝手に応援している一太郎、最新バージョン10のリリースが発表されている。
 個人的に気になるのはHTML変換機能。パソコン出願に対応した「特許出願形式で保存」を充実させて欲しい。具体的には表の変換(tableタグを付けないで、罫線素片に変換)、イメージデータをGIFに変換する際の形式を設定できるようにすること(87aノンインターレス)、「枠と文字の配置」で文字が回り込まないよう自動的に設定、等々。画像の保存形式以外はすべてマクロで実現できそうなくらい、簡単なことだと思うが...
 一太郎に限ったことではないが、どんなソフトでもバージョンアップの度にどんどん重くなっていく。バグも増えて、安定度も悪くなる。ごく最近まで、明細書やその他の文書作成には98版(もちろんWindows98でなく「NEC PC-9800」シリーズのことです)「一太郎Ver.5」を使っていた。ハードはNECの98ノート、Nd。CPUは486SXの33MHz、メモリは16メガビット。Windowsを使わなければ(私の場合、インターネットをやらなければ)これで十分だったのだ。MS-DOSのバージョン5は非常に安定していた。実際、五太郎がハングアップした記憶はほとんどない。機能的にも、不便はなかった。
 この文章は一太郎バージョン9を使って書いているが、これ以上重くして欲しくないなーーーと切に願う。あと、「バージョン3形式での保存」を復活させて欲しい。(ひとりごと:是非出して欲しいソフト バグを修正した一太郎Ver.3のDOS/V版とWindows版とNEC98版。キーアサインを今の標準フォーマットに手直しして、ATOKはバージョン8にする。そんなに難しいことじゃないと思うんですが。売れないですかね〜超軽快ワープロソフト)
 そういえば、一太郎Liteのバージョン2も出たらしい。「バージョン3形式の保存」がサポートされておれば、そく買い!だが、まず無理でしょうな...結局、Ver.3形式で保存しようと思ったら、Windows 3.1用の一太郎Ver.6を使うしかないのか。
 花子のバージョンも10になるらしい。花子フォトレタッチも添付される模様。特許図面の作成にはどれだけ役立つだろうか?
 図面の読み取りには、花子フォトレタッチでは不十分だった。大きな図面を読み込むとデータが扱えないという警告が出たからだ。今回この点は改善されているだろうか。
 なんでも、花子にはビットマップデータをベクトルデータに変換する機能も付くらしい。もしも、この機能がまともに使えるなら、図面を読み込んで修正する際に非常に便利になると思うが、現在このような機能が実用に耐えるレベルで実現されたソフトを、私は聞いたことがない(「ストリームライン」とか、使ったことはないが)。それだけに、あまり期待しないでちょっとだけ楽しみにしている。
 
関連情報:
・一太郎アニバーサリーサイト「10up!」
http://www.justsystem.co.jp/anni/index.html
 
 
2. リーダーズ英和辞典の最新版
 翻訳には必携の辞書がバージョンアップ。まだ入手していない。どの程度専門技術用語が拡充されたかが、非常に気になる。なんでも「リーダズ・プラス」から単語を取り込んだらしいが、プラスに載っていない単語がどれだけ増えたかが気になるところ。CD-ROM版も早く出して欲しい!
 個人的にリーダーズは大学のときから使っており、現在2冊目。CD-ROM版(「リーダーズ」と「リーダーズ・プラス」が一緒になったもの)を特によく使っている。CD-ROMの辞書ソフトを利用するには、CD-ROMをハードディスクにコピーするユーティリティソフト「携速98」と、CD-ROM用検索ソフト「DDWin」を併用すると、非常に便利。
 「携速98」は複数のCD-ROMを圧縮してハードディスクに保持できる(他にも同様のソフトが各社から発売されている)。
 「DDWin」は串刺し検索が可能なので、複数のCD-ROMをいっぺんに検索できる。
 これらの組み合わせで「リーダーズ+プラス」と「マグローヒル科学技術用語大辞典−第3版−」の辞書を使えば、仕事にはばっちり!と自分では気に入っている。
 
 
1999/07/21
 
1. Y2K訴訟制限法案に大統領署名
 7月20日に署名したらしい。でも、声明を発表している。この法案にはやはり反対を姿勢を示しておきたいようだ。AP通信より。
"My signature today in no way reflects support for the Y2K Act's provisions in any other context."
 
関連情報:
・"Clinton Signs Bill on Y2K Suit Limits", ASSOCIATED PRESS (July 21, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A3629-1999Jul20.html
 
 
1999/07/16
 
1. 2000年問題訴訟制限法案通過
 同法案はクリントン大統領に回付。一時は成立が危ぶまれたが、無事立法化へ。なお、今回初めて法案の署名に感圧式パッド(タブレットのことか?)を使用したらしい。どうでもいいが。
 毎日新聞より。
===================================
 2000年問題が原因のトラブルで消費者が企業相手に起こす損害賠償訴訟を制限する法案が15日(米国時間)、議会を通過、大統領に送付された。法案への議会の署名は米議会史上でも初めて、紙とインクを使わない「電子署名」を採用。さらに法案はクリントン大統領に電子メールで届けられた。
 同日行われたセレモニーでは上下両院の代表がPDF版の法案に感圧式パッドとスタイラスペンでサイン。署名には、電子商取引向け電子署名技術の米ペンOPの手書きデジタル署名ソフトを使用した。
 同法案は、訴訟制限がなければ総額1000万ドルにのぼると試算される2000年訴訟について、企業のトラブル修復や法廷外の調停のため最高90日間の猶予期間を設けたり、総額1000万ドル以下の集団訴訟は起こせないようにするもの。企業救済を主とする議会と消費者保護盛り込みを求めるホワイトハウスの間で綱引きが続いていたが、企業寄りの内容で決着した。
 
関連情報:
・「米2000年問題訴訟制限法案通過、メールで大統領へ」MainichiDailyMail Computing,No.510(1999年7月16日)
 
 
1999/07/15
 
1. WTO交渉、日本側は「一括受諾」で
 来年から始まる世界貿易機関(WTO)の次期貿易自由化交渉の対象分野や交渉方式についての日本政府提案が9日明らかになった。
 asahi.com金融市場情報 重要経済記事を読む、より。
 
関連情報
・「WTO次期交渉、13分野『一括受諾で』:日本、投資ルールなど提案」朝日新聞(1999年7月10日)
http://iij.asahi.com/market/news/19990710-1.html
 
 
1999/07/14
 
1. CAFC判決:オデティックス社対ストレージ・テクノロジー社事件(1999年7月6日判決)
 おなじみ112条第6パラの均等と、均等論でいう均等の比較。機能クレームの文言侵害では、構成部品毎の対比が必要でないという驚くべき判決。
 
判示事項:
・112条第6パラグラフに基づくミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの均等性判断には、各コンポーネント毎の対比(component-by-component analysis)は不要である。
 クレームされた機能に対応する構造「全体」がクレーム限定(limitation)であるから、これを基準にイ号と対比しなければならない。
 クレーム・リミテーションをさらに分解してコンポーネント基準に均等性を判断してはならない。
 
合議体:ローリー、クレベンジャー、シャール判事
判決主文:クレベンジャー判事
対象技術:回転式挿入・取出機構を備えるテープの自動取扱システム(automated tape handling system)
主な争点:
 112条第6パラの均等性判断基準
 従前の判例の解釈 ペンウォルト、ワーナージェンキンソン等
 チューミナッタ事件の意味
 
事件の経緯:
 オデティックス社はロボット式テープ取扱システムの特許を有している。これはビデオテープやコンピュータのデータ保存テープの保存、整理、取り出しに利用されている。一般には、テープを収納する大きな円筒状のコンテナの中央に、旋回式の取り出し機構(ロボットアーム等)を備える。外部からの命令に従ってロボットアームが所望のテープを掴み、保存用棚から別の棚、あるいは再生機に移動させる。このようなシステムは、大量のデータを簡単かつ迅速に取り出す必要のある部署で使用される。本件では、イ号装置は金融取引情報の保存やアクセスに使用されており、VISAやクレスター・バンク(Crestar Bank)等も被告として名を連ねている。
 被告の製品は、図がないので詳細はよく判らない。(インターネット上にカタログ等が出てないか探しましたが、該当する製品「ACS 4400, the PowderHorn, and the WolfCreek」は発見できませんでした。ご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示下さい。)判決文の説明によれば、収納するテープ数が多くなっても収納用ライブラリ・コンテナを追加できるよう構成されている。コンテナ間を「パス・スルー・ポート」で繋ぎ、ここをテープを保持した箱状の「箱列("bin array")」がスライドして移動する。箱列は保持するテープをライブラリ・コンテナ内で取り出しできるよう旋回可能となっている。旋回には、箱列の底面に固定されたピン状の「カム・フォロワ(cam followers)」を使用する。このピンが、角度付の構造(angled structures、多分溝やガイドか?)であるカムに接触し、カムがピンに応力を生じるため、箱列はロッド状を旋回する。この箱列は、テープ保持部、箱、ロッド、ピンを備えていた。
 オ社の技術は1980年代に特許された。オ社は1995年にストレージ・テクノロジー社をバージニア州東部地区連邦地方裁判所に提訴した。当初、陪審は非侵害との評決を下したが、これに対し原告はCAFCに控訴した。CAFCは訴えを認め、事件は地裁に差し戻された。今度の陪審は、1998年3月、オ社に7060万ドルの損害賠償を認める評決を下した。
 しかし、CAFCのチューミナッタ事件(Chiuminatta Concrete Concepts Inc. v. Cardinal Indus Inc.)の判決がこのとき下された。この判決に従い、地裁裁判官トーマス・エリス判事(Judge Thomas Ellis)は、評決を覆し非侵害のJMOLを認める判決を下した。事件は再び控訴され、今回の判決と相成った。
 クレベンジャー判事は陪審の評決を維持、特許権侵害を認めている。
 しかしローリー判事は、多数意見が機能と構造を混同しているとして、反対意見を書いている。
 
・損害賠償の増額(enhancement of damages)について
 リード社対ポーテック社事件(Read Corp. v. Portec Inc.)では、特許法284条(三倍賠償)により賠償金の増額が認められるための条件について検討されている。
 上記判決中の「D. Enhanced Damages」では、以下のように判示されている。
「ボット事件(Bott v. Four Star Corp., 807 F.2d 1567, 1572, 1 USPQ2d 1210, 1213 (Fed. Cir. 1986))では、被告が悪意であった場合にこの者に課す損害賠償額を倍増するか否かを検討するための3つの要因が明らかにされた。
 (1) 侵害者が故意に(deliberately)他人のアイデアもしくはデザインを模倣したか
 (2) 侵害者は、他人の特許権の存在に気付いたとき、当該特許権の範囲を調査し、該特許権が無効もしくは非侵害であるとの確信を悪意なく抱いたか(formed a good-faith belief)
 (3) 訴訟当事者としての侵害者の振る舞い(behavior)
 以上ですべてでなく、以下のような条件も(特にどの程度増額するかを判断する際)裁判所は検討すべきである。
 (4) 被告の規模および経営状態
 (5) 事件の類似性?(Closeness of the case)
 (6) 被告の侵害期間
 (7) 被告の行った救済措置
 (8) 損害に関する被告の動機
 (9) 被告が自身の侵害行為を隠匿しようとしたか
これらの要因を適用することで、他の不法行為の状況における懲罰的賠償(punitive damage)の検討と調和する。」
 
論点:
・用語の定義
クレームのエレメント?リミテーション?コンポーネント?
  エレメントは、クレームの構成要件
  リミテーションは、侵害判断の基準(通常は、エレメントと同一であることが多いが、同一でない場合もある 例.コーニング・グラス対住友電工事件)
  コンポーネント(部品)は、リミテーションをさらに分解したもの。ここまでバラして侵害判断するのは行き過ぎと、今回判示。
※字義から考えるとコンポーネントの方がエレメントより大きそうなので、注意!
→現実の事件では、上記のどれをどの部材に当てはめるかが問題!
 
・PTCJ Vol.58, No.1433のコメント
「コンポーネント毎でなく、リミテーション全体で判断」を、均等論侵害のおなじみの議論、「発明全体」か「構成要件毎」かの判断基準と対比
 「『構成要件毎』判断を推奨するポリシーは、『コンポーネント毎』判断も推奨しているように見える。」
 本件の地裁でエリス判事は、脚注5で以下のように述べている。
 「侵害の解析判断は、判断基準の細かさについて適度なレベルで行わなければならない。構造の様々なエレメントについて、明細書に開示された構造とイ号の構造との比較をあまりにも細かいレベルで行わないような注意が必要である。もしそのようなやり方をすれば、『均等』の意味が特許法112条第6段から外れて解されるおそれがある。...」
To be sure, the infringement analysis must be conducted at the appropriate level of detail. Care must be taken not to analyze the various elements of the disclosed and accused structures at too minute a level. To do so would risk reading the term "equivalent" out of Section 112, Para. 6, for at too fine a level of detail, an accused structure would be either identical or noninfringing. On the other hand, if the analysis were conducted at too general a level of detail, almost all accused devices would be deemed equivalents. The proper level of detail for this analysis depends on the facts and circumstances of each case. In this case, the Federal Circuit has defined the appropriate level of analysis for this case in construing the rotary means element of claims 9 and 14, to include the gear as an integral element of the disclosed structure.
 PTCJのコメントでは、CAFCが複雑にしたとしている。
 
関連情報:
・オデティックス社対ストレージ・テクノロジー社事件 1999年7月6日
 Odetics, Inc., v. Storage Technology Corp., 98-1533, -1585 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/OdeticsvStorage7.6.99.htm
・Brenda Sandburg, "$70 Million Patent Verdict Reinstated.1" The Recorder/Cal Law (July 14, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/practice/iplaw/news/A3381-1999Jul13.html
Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Industries, Inc., 145 F.3d 13039, 46 USPQ2d 1752 (Fed. Cir. 1998).
(112条第6パラと均等論の「均等」の区別に言及している。
・均等の基準時が、ミーンズ・クレームでは特許成立時、均等論侵害では侵害時。
・ミーンズ・クレームでは機能の同一性を要求、均等論では実質同一で足りる。
 判決文を書いたのは、今回反対意見を書いているローリー判事。他の合議体(panel)は、ミッシェル判事、プレーガー判事。)
http://www.ipo.org/Chiuminatta.html
Read Corp. v. Portec Inc., 23 USPQ2d 1426 (Fed. Cir. 1992).
・1999年7月15日付BNA's Patent, Trademark and Copyright Journal, Vol. 58, No.1433, 318
・服部健一「日米ホットライン」発明(発明協会発行)
 A. 1998年9月号 オデティックス事件の地裁判決その1 差し止め
「特許権者は提訴までに懈怠(laches)があった場合、当該懈怠期間中に製造販売されたイ号の使用を差し止めることはできない」
 通常、特許権者は侵害の事実を知ってから提訴するまで時間をおきすぎると、懈怠とみなされて損害賠償を請求できなくなる。この期間は通常6年程度とされている。
 本件では、さらに差し止め請求も認められないとされた。
 B. 同1998年9月号 チューミナッタ事件
「ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの均等物とならないものは、均等論侵害もないことがある」
 C. 1998年12月号 オデティックス事件の地裁判決その2 均等論侵害
「ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームで均等物とならないものは、均等論侵害にもならない」
 
 
1999/07/13
 
1. フィネガン事務所のダナー氏、CAFCへ?
 リッチCAFC判事が亡くなられてから、繰り返し伝えられているこの噂、本当のところどうなんだろう。
 本日付のロー・ニュース・ネットワークによると、ダナー氏はリッチ判事の後任としてCAFC判事席の空席をゲットすべく、自ら積極的にキャンペーンを展開しているようだ。
 ダナー氏はアメリカ知的所有権法協会(American Intellectual Property Law Association (AIPLA))に対し、同氏が裁判官になれる資格適性を備えていることを確認するよう依頼。これを受けてAIPLAは、クリントン大統領と大統領首席法律顧問オフィス(White House Counsel's Office)に対し同氏の立候補承認を送った。AIPLAの専務(executive director)マイケル・カーク氏(Michael Kirk)が言うには、ダナー氏がCAFCおよびその前身であるCCPAで100件以上に関与しており、うち3/4で本人が弁論に携わったという。カーク氏は、AIPLAが資格のある候補者は誰でもバックアップすると述べているが、現在のところはダナー氏以外の候補者なし。また、IPO(Intellectual Property Owners Association、知的所有権権利者協会)の専務ハーバート・ワムズリー氏(Herbert Wamsley)もダナー氏が適任であると同意している。
 ダナー氏は、米特許庁で審査官としての勤務経験がある。ちなみに現役のCAFC判事のうち、特許法のバックグラウンドがあるのはわずか2人、ニューマン判事とローリー判事だけ。またダナー氏はCCPAの首席判事(chief judge)、ノーブル・ジョンソン判事(Noble Johnson)のロー・クラークを勤めていた。また1982年、CCPAがCAFCにアップグレードされる際は、諮問委員会の議長(chairman of the advisory committee)も勤めた。20年前、フィネガンに参画する前はLane, Aitken, Dunner & Ziemsに所属。またAIPLAの前身、APLA(American Patent Law Association)で代表を、アメリカ法曹協会(ABA)知的財産権法部門で議長を務めたこともあるという。さらに現在アメリカン大学ワシントン校法学部で助教授、CAFCにおける実務手引書2巻を共同執筆...凄すぎるキャリアだ!
 現在は、ご存じアメリカ最大規模の特許法律事務所、フィネガン・ヘンダーソン・ファラボウ・ギャレット&ダナーのネームド・パートナー。同事務所は訴訟系に強く、地裁で負けた企業は担当弁護士をクビにしてフィネガンに駆け込んでくるとか。
 同氏の担当した事件で有名なのは、1992年のレメルソンがらみの事件(Lemelson v. General Mills Inc.)。この事件でレメルソン側は、1967年(!)に出願した「Toy Track」を、マテル社(Mattel、バービー人形で有名な大手玩具メーカー)の「ホット・ウイール(Hot Wheels)」というおもちゃが侵害しているとして訴えた。自由に組めるコース上を車が走るサーキットみたいなやつ(当時流行した)。ダナー氏は、8000万ドル以上の陪審評決を覆すことに成功している。ちなみに過去10年間で、レメルソンとその財団が負けた特許事件はこれだけらしい(高裁まで上がってる事件は少ない。ほとんどは和解になってるでしょうけど)。
 一方、随分前から次のCAFC判事には、ティモシー・ダイク氏(Timothy Dyk)という候補者もいたのだが、忘れられているのだろうか?ダイク氏はクリーブランドの弁護士で(Jones, Day, Reavis & Pogueのパートナー)、リッチ判事の亡くなる前からあったCAFCの空席(アーチャー前主席判事がシニアになったから。CAFCの定員は本当はシニアを除いて12人だと思うが(28 USC 44)、今は2人足りない計算になる)を埋めるべく議論されていたが、色々と反対にあって難航していた。
 
関連情報
・Brenda Sandburg, "Dunner Eyeing Federal Circuit Seat: Name partner in top patent firm is considered best replacement for the late Judge Giles Rich.", The Recorder/Cal Law (July 13, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/practice/iplaw/news/A3318-1999Jul12.html
http://www.ipmag.com/dailies/1999/july/990713.html(写真入り)
・現在のCAFC判事の経歴
http://www.fedcir.gov/judgbios.html
Lemelson v. General Mills Inc., 23 USPQ2d 1284 (Fed. Cir. 1992).
(事件の経過は服部健一,山口洋一郎「ディスカバリー(証拠開示)と対策」(アクセス・ニッポン社・1993)98頁で読める)
 
 
1999/07/10
 
1. 日本の裁判官、特許訴訟を学ぶため海外へ
 日本の最高裁判所が、特許訴訟制度調査のために裁判官を海外派遣する方針であると報じられている。迅速で合理的な良い面を積極的に取り入れようとする姿勢は素晴らしいと思う。何でも英米主義がいいとは思わないが、優れている面は色々あると思うので、これらを習得して自国の制度向上に生かすのは賛成。ただ、2ヶ月ではきついんじゃないかな...
 朝日新聞より。
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 最高裁は、特許権や著作権などの知的財産権をめぐる紛争を担当する裁判官を海外に派遣し、特許訴訟制度について本格的な実態調査を始める方針を固めた。国際会議などへの参加を通じて国際感覚を身につけるとともに、審理が速く進むといわれる外国の実情を参考にして裁判の迅速化を図るのが狙いだ。国内の特許訴訟をめぐっては、経済界を中心に「米国と比べて賠償額が低いうえ、審理期間が長いために、企業は米国で特許訴訟を起こすようになっている」という声もある。
 海外に派遣される裁判官は、年内にまず5人。調査期間はそれぞれ約2カ月間を予定しているという。最高裁行政局によると、(1)東京高裁の裁判官が米国ワシントン大学のセミナーに参加した後、オランダで特許訴訟の実態を調査する(2)東京地裁の裁判官が米国バージニア州東部地区の連邦裁判所の審理実態を調べる(3)ワシントンで10月に開かれる国際特許裁判官会議に3人の裁判官が参加する――ことが決まった。
 オランダでは、特許訴訟の当事者が通常の手続き以外に早期裁判を選ぶことができ、提訴から1年前後で判決に至っているという。バージニア州では、裁判所が審理日程をすべて決める強い権限を持って進められ、「超特急審理」とも言われている。
 国内の特許訴訟に関する批判に対し、最高裁は、日米で損害賠償に関する法制度が異なるため、賠償額の安易な比較はできない▽外国の大企業が東京地裁や大阪地裁に提訴しているケースもある▽訴訟を起こす場所については、どの国の市場を重視するのかなどに左右される面も大きい――などと反論する。ただし、「裁判官が国際レベルの知識や感覚を身につけることは特許訴訟の審理を充実、促進させるうえで不可欠だ」として、本格的な海外派遣に踏み切った。
 こうした中で最高裁は、若手裁判官を来年度以降、世界各国の知的財産権部門の情報収集や研究をしているドイツの「マックスプランク研究所」へ継続的に留学させる検討も始めた。
 
関連情報:
・「特許訴訟制度調査のため、裁判官を海外派遣 最高裁方針」asahi.com News Update(1999年7月10日)
http://iij.asahi.com/0710/news/national10016.html
 
 
1999/07/09
 
1. ジェネンティック、再審理の争いに敗れる
 このニュース、聞く方もいい加減飽きてきたのではないかと心配してます(報告する方も!)
 ジェネンティック社は、先日のカリフォルニア州立大学(University of California)に有利な(特許は他人の使用により無効でないとの)判決をご破算にして、願いましては審理を最初からやり直すよう申し立てていた。サンフランシスコに位置するカリフォルニア州北部地区連邦法裁判所のチャールズ・レジー判事(Judge Charles Legge)は、この申立を却下。
 
関連情報:
・Mike Mckee, "Genentech Loses Retrial Attempt", The Recorder/Cal Law (July 9, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A3191-1999Jul8.html
・Mike Mckee, "Genentech Loses Retrial Bid: San Francisco federal judge upholds jury verdict on human growth hormone infringement claim" IPMag.com (July 9, 1999).
http://www.ipmag.com/dailies/1999/july/990709.html
 
 
2. シェパードを巡る戦い
 「シェパード(Shepard's system)」とは、ある事件の判決が未だ有効なものか、その後別の事件で覆されたものか等、有効性を調べる手段として米法律家の間ではおなじみの業界用語(?)であるが、ご存じの通り本来は登録商標である。元々、「Shepard's Citations」という本であり、法律大国であるアメリカにおいて、オンラインシステムの完備する以前は関連する法律条文、判決の有効性確認、意味解釈のための重要な手段であった。現在ではオンラインサービスを使えばこれらを機械検索により一瞬で利用できる。便利になったものだと実感する瞬間であるが、いまでも手めくりによるシェパダイズ(シェパードすることを「shepardize」という。)の有用性は失われていない。
 しかしシェパードという言葉自体は一般用語として業界で定着しているため、法律サービスの提供においてこの言葉を使えないと分が悪い(格好がつかない?)。ということで、米の2大大手法律オンラインサービス、ウェスト社(West Group)とレクシス社(LEXIS Online Publishing)とが争っている。
 「シェパード」は現在、レクシス社の権利下にあるようで同社のオンラインサービスLexis-NexisでShepardを利用できる。一方、ライバルのウェスト社のオンラインサービスWestLawも、ライセンスに基づきShepardを使用していた。WestLawでは、同種のサービスとしてKeyCiteというサービスを有している。
 レクシス社は、競争相手のWestLawが7月1日の実施許諾満了後も継続してシェパードの名称と商標を使用しているとして提訴した。同社はオハイオ州南部地区連邦地方裁判所に対し、ウェスト社による商標の継続使用を禁止する仮処分(temporary restraining order)を申請したが、ライス判事(Judge Rice)は未だ決定を下していない。
 
関連情報:
・Daniel Wise, "Legal Research Titans Battle Over Shepards", New York Law Journal (July 9, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A3186-1999Jul8.html
 
 
3. インディアンのシンボルを商標として保護しよう
 ニューメキシコ州アルバカーキ発AP通信より。
 ニューメキシコ州のインディアン、ジア族にとって、太陽は神聖な象徴である。彼らは太陽を表す様式化したマークを使用しているが、このマークが州旗や電話帳などに使用されているとして、米特許庁に(おそらく商標審判部に対し)不正使用(misuse)を訴えている。彼らからすれば真正なシンボルを商目的で使用することは冒涜と映るのであろう。
 この例に限らず、インディアンのマークや名称を商利用している例が多い。昨年の商標法改正により、特許庁はインディアン部族に対して、例えば旗、武装した衣装といった、商標としての使用から保護して欲しい公的な紋章(official insignia)のリストをどのように作成すればよいか、意見を求めている。
 
関連情報:
・REBECCA LOPEZ, "Tribes Seeks Protection for Symbols", Yahoo News (Associated Press) (July 9, 1999).(紋章の写真が見える)
http://dailynews.yahoo.com/headlines/ap/ap_us/story.html?s=v/ap/19990709/us/tribal_symbols_1.html
・"Official Insignia of Native American Tribes; Statutorily Required Study", Federal Register: June 15, 1999 (Volume 64, Number 114).
 
 
4. パソコン出願ソフト1.03e公開
 平成11年6月の料金改定に対応したパソコン出願ソフトの新版[1.03e]が、平成11年6月30日17時より「パソコン出願運用サーバ」で提供中とのこと。日本特許庁ホームページより。
 
関連情報:
・「パソコン出願ソフト[01.03e]の提供について」日本特許庁(1999年6月)
http://www.jpo-miti.go.jp/info/0103e.htm
 
 
1999/07/08
 
1. カッツェンバーグ、ディズニーと和解
 和解条件は公表されず。「トレードシークレットに関する重要な争点」はどうなったの?過去のひとりごと参照。
 
 
2. 日本独禁法指針について
 公正取引委員会は現在、1989年の現行基準(「特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法の規制に関する運用基準」)を見直し作業中。その理由の一つに、「従来の『不公正な取引方法』にあたる事例だけでなく、『私的独占』や『不当な取引制限』にあたる知的財産権関係の事例が増えている」ことが挙げられている。
 経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)より。
 
情報元及び関連資料:
・「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針(原案)について 公正取引委員会から説明を聞く」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/CLIP/clip0100/cli020.html
・「特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法の規制に関する運用基準」公正取引委員会事務局(平成元年2月15日)
http://www.jftc.admix.go.jp/guidline/tokkyo.html
 原文のまま
====================================
 公正取引委員会は、昭和43年5月24日、国際的技術導入契約に関する認定基準を公表し、特許又はノウハウの実施許諾を内容とする国際的契約において、不公正な取引方法に該当するおそれのある事項のうち、主要なものの類型を明らかにし、これを独占禁止法第6条第2項に基づき届出のあった国際的契約の審査の基準としてきたところである。
 近年、我が国における国際的技術取引契約及び国内事業者間の技術取引契約の件数が増大し、技術取引の占める重要性が高まっていることにかんがみ、今般、特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法の規制に関する運用基準を策定することとした...
 
 
1999/07/07
 
1. ディキンソン氏、正式に特許庁長官へ就任
 昨年末のレーマン長官辞任に伴い、繰り上げ当選となったディキンソン(Q. Todd Dickinson)米特許庁長官は、Acting Commissioner、つまり長官代理(Dupty)ということになっていたが、このほどクリントン大統領から正式の特許庁長官として指名を受けた。
 なお別件であるが、先日亡くなったリッチCAFC判事の後釜に、フィネガン・ヘンダーソン事務所のネームド・パートナーであるドナルド・ダナー(Donald Dunner)氏の名が挙がっている。
 
関連情報:
・米特許庁Press Release #99-19 "PRESIDENT CLINTON NOMINATES TODD DICKINSON TO TOP POST AT U.S. PATENT AND TRADEMARK OFFICE"1(July 6, 1999).
http://www.uspto.gov/web/offices/com/speeches/99-19.htm
・IPOデイリーニュース
 
 
2. 米マリンバがカスタネットで特許取得
 プッシュ関連事業の情勢が厳しい中、マリンバが奮闘。
 毎日デイリーメールより。
===================================
 米マリンバは6日(米国時間)、ネットワークを使ってデータやプログラムを配信したり自動的に更新する同社の「カスタネット」に使われている技術が米国特許を取得したと発表した。
 特許を取得したのは、「コードおよびデータのアップグレードの配布法」と名付けられた技術で、カスタネットがイントラネット、インターネットを問わず、ソフトウエアやデータを効率的に配布するために用いられている技術の一部という。
 マリンバは「プッシュ」技術ブームの際、インターネットを利用して、データやソフトウエアを効率的に配布する技術の会社として注目された。現在はインターネットベースの総合ソフトウェア管理技術に注力している。マリンバは、さらに5件の特許を申請中という。
 
関連情報:
・「米マリンバがカスタネットで特許取得」毎日デイリーニュース・コンピューティングNo.503(1999年7月7日)
・マリンバ
http://www.marimba.com/
 
 
3. スタートレック新TVシリーズ!「Flight Academy」
 特許に関係なくとも、書かずにはおれない。2002年には登場か?
 米TVガイドより。
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NEW TREK SERIES IN THE WORKS: The new Star Trek TV series is already on the drawing board, the New York Post reports, and could debut by 2002. The new series will supposedly be titled Flight Academy Star Trek and will focus on a group of up-and-coming young space explorers. The new series is the brainchild of veteran Trek writer Brannon Braga and Voyager producer Rick Berman.
 
情報元:
・TVGuide Insider
http://www.tvguide.com
 
 
1999/07/06
 
1. 係属中の米国出願が特許されたかどうかを知るには
 早期公開制度のないアメリカでは、ある出願が係属中かどうかを知ることは困難である。しかしながら、出願番号と出願日が外国公報から判明しておれば、その米国出願が係属中か特許済か、あるいは放棄されたかという出願の現状(status)を知ることはできる。
 米国出願に基づき優先権を主張する対応外国出願がその国で公開された場合、米国出願の出願番号が公報に記載される。この情報に基づいて、米特許庁に対しステータス情報を問い合わせることができる。また、国際公開されたPCT出願についても、米国が指定されている場合は、米国での国内段階の状況や、PCTの継続出願の状況も問い合わせることが可能。これらは米特許法施行規則1.14(a)(1)に規定がある。また詳細はMPEP102で説明されている。
 原則、ステイタス情報を請求できる者は出願人本人や発明者、譲受人だが、外国特許公報で米出願の出願番号、出願日を知った者も、ステイタス情報を請求する権利を得る。その出願が既に特許されたか、未だ係属中か、あるいは放棄されたかどうかの情報と、これに加えて当該出願に基づく分割・継続出願があればそのステイタスも問い合わせることができる。請求者は身元を聞かれるらしいが、個人名でOKらしいので会社名は伏せることが可能。
 請求のための書式は特にない。「これこれの公報に記載されている出願のステイタス情報を37 UFR 1.14(a)(1)(i)(B)(PCTのときは(C))に基づき請求する」旨を手紙にして、米出願の願番が記載された公報のコピーを付けて、郵送もしくはFAXで送ればよい。ただし、返事には時間がかかることもある(早ければ2週間、遅いときは2〜3ヶ月)。
 また特許庁に直接電話して、ステイタスを問い合わせることも現実には可能。ただ、日本から直接電話をかけるよりは現地の代理人(弁護士・弁理士)に頼んだ方が無難。(時差や言葉の問題もあるが、おそらくは非公式な運用なので、米弁護士以外がかけるといやな顔(声)をするらしい。特許庁の電話応対がよろしくないのは万国共通か?)電話番号は、703-305-1801?もし番号が違っていても、転送されるか正しい番号を教えてくれるだろう。
 
 なお、その出願が特許されたかどうかを知る最も簡単な方法は、特許庁のホームページでデータベースから当該出願の公報を検索することである。もし既に特許されていれば、検索結果があがってくるはず(若干のタイムラグ、あるいはごくまれに掲載漏れがあるかもしれないが)。検索されない場合は、未だ係属中か放棄されたかということになる。
 検索は、特許庁の公報検索ページからブーリアン検索画面に入り、検索条件として出願番号(Application Serial Number)を選択する。通常、米出願の願番は6桁の連番になっているので、これを入力する。
(出願番号は08/123,456という形式になっており、上2桁がシリーズ・ナンバー、下6桁がシリアル・ナンバー。シリアルナンバーが一杯(999,999)になると、次のシリーズ番号になる。したがって、同じシリアルナンバーの出願が年度を違えて複数存在することになる。現在はシリーズ"09"が始まっている。最近まで"08"が使われていた。その前の"07"は、1992年頃まででなかろうか。)
 
関連情報:
・米特許法施行規則1.14(a)
・米特許審査便覧102
・Information Contacts 特許庁電話番号一覧
"Status Inquiry of Pending Applications -- See appropriate Technology Center or 703-305-1801"
http://www.uspto.gov/web/info/infocont.htm
・米特許庁公報検索サイト「ブーリアン・サーチ」
 「Field」で"Application Serial Number"を指定し、6桁を入力する。シリアルナンバーが同じ出願があるので、出願日に注意。
http://164.195.100.11/netahtml/search-bool.html
 
 
1999/07/05
 
1. 日本の最高裁ホームページ、「知的財産権判決速報」提供開始
 既報の通り。東京、大阪の高裁と、東京、大阪、名古屋の地裁判決を順次掲載。最高裁判決は従来通り。
 
関連情報:
・知的財産権判決速報
http://courtdomino.courts.go.jp/chiteki.nsf/$About
 
 
1999/07/02
 
1. 本家iMac、ついに提訴
 とうとうアップルも切れたか、もとい、訴訟に踏み切った。iMacのヒットで猫も杓子も”iMacスタイル”が氾濫していたが、さすがにWindowsパソコンまでがこれを真似るとなると、黙ってはおれないのだろう。
 アップルの訴訟は珍しくないが、パソコン本体のデザインを訴えた例はあまり無いのでは?以前、マイクロソフトのウィンドウズを訴えたときはパソコンのデザインではなく、ソフトウェアのデザインであった。(「look and feel(画面の処理や操作の面から見たプログラムの一般的印象、感じ)」が問題となったこの訴訟では、アップルは敗れている。)しかし考えてみればマッキントッシュ本体のデザインも当時は斬新だったはずだ。日電が以前マックっぽいデザインの98パソコンを販売したこともあったらしい(リンゴのマークがないためか、あまり売れなかったそうである)。
 産経新聞、ZD/NETその他より。ひとりごと6/25付#2も参照。
===================================
 アップルコンピュータは6月1日、iMacの工業デザインを盗用されたとして、大宇(Daewoo、韓国大手企業)と、フューチャー・パワー(Future Power)に対し損害賠償と販売差し止めを求める訴えをカリフォルニア州サンノゼ(San Jose)の連邦裁判所に起こしたと発表した。アップル社はE-Powerの出荷停止と、損害賠償(実害および懲罰的損害賠償(unspecified actual and punitive damages))を請求してカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Northern District of California)に提訴している。
 E-Powerを発表したフューチャー・パワー社は米国のパソコンメーカーで本社カリフォルニア州、Daewoo Telecom(同州サンタクララ)が参画するジョイントベンチャー企業。
 「E-Power(E-パワー)」は外観や色がiMacに似たウィンドウズ用パソコンで、ニューヨークで6月下旬に開催されたパソコン展示会「PCエキスポ(PC Expo)」に出展され、注目を集めた。米国では799ドル(約9万6500円)で8月末頃、9月には日本でも販売を予定。
 E-Powerの筐体は、iMacのように半透明のスケルトン仕様で、色も同じ5色構成。ただし、色の名称は宝石の名前に変えてある。アメジスト、ルビー、トパーズ、エメラルド、サファイア(emerald, ruby, topaz, sapphire and amethyst)。iMacはリンゴでなく果物の名前だった(blueberry, grape, strawberry, tangerine and lime)。
 アップルのスティーブ・ジョブズ暫定最高経営責任者(interim chief executive、iCEO?)は「Future PowerとDaewooは、Appleのデザインをコピーする道を選ばずともオリジナルデザインの世界を作ることができたはずだ。われわれは多くの金銭と努力によって自分たちのデザインを作り出し、マーケティングを進めた。法の下で徹底的に守っていく所存だ」と決意を示した。
 
関連情報:
・「アップル、iMac酷似のPC提訴」産経新聞(1999年7月2日)
http://www.sankei.co.jp/html/0702side053.html
・"Apple sues Daewoo, Future Power for copying iMac" FindLaw Legal News, Reuters(July 1, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990701/bctechapple.html&nofr=y
・Margaret Kane,「Apple,『iMac模倣』のPCメーカーを提訴」ZDNet/USA(1999年7月1日)(iMacとE-Powerを並べた写真あり)
http://www.zdnet.co.jp/news/9907/02/apple.html
・Wendy J. Mattson and Matthew Rothenberg,「Future Powerに対するAppleの訴え」MacWEEK.com(1999年7月2日)(アップルの訴状でトレードドレスが論じられている)
http://www.zdnet.co.jp/macwire/9907/02/n_epower2.html
・Jon Swartz, "Apple Sues Maker of Candy-Colored iMac Look-Alike Computer", San Francisco Chronicle (July 2, 1999).(トレードドレスのごく簡潔な説明あり。専門家のコメントによると、もしアップルがウィンドウズを訴えたときにトレードドレスを主張しておれば、アップルは勝ったであろうという。)
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/chronicle/archive/1999/07/02/BU22401.DTL&type=tech_article
・Michael Kanellos,日本語版:三橋直樹「アップルが『iMacそっくりPC』で2社を提訴」CNET Japan Tech News(1999年7月1日)
http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/990702-1.html
 
 
1999/07/01 !!!Start Again!!!
 
1. シリコンバレーの特許事務所閉鎖
 大した記事でないかもしれませんが、シリコンバレーでパイオニア的存在だったというパテント・ローファーム「ブラウン&ベイン(Brown & Bain)」が7月末をもってパロアルトのオフィスを閉めるとローネットワークに出ていた。ちなみにここの本拠はアリゾナ州フェニックス。
 同事務所が扱ったメジャーなケースはアップル・コンピュータ対フランクリン・コンピュータ(Apple Computer, Inc v. Franklin Computer Corp.)事件で、コンピュータのコードに著作権を確立したらしい。また、有名なアップルとマイクロソフトの争い−ウィンドウズのGUIが著作権侵害だとアップル社が訴えた事件で、ここでは敗れている。さらにインテル対AMD(Intel Corp. v. Advanced Micro Devices Inc.)では486プロセッサについて争い、この件では1995年に和解が成立している。
 
情報元:
・Brenda Sandburg, "Silicon Valley Pioneer Folds Office: Once a player, Brown & Bain is closing its Palo Alto outpost" The Recorder/Cal Law (June 30, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2935-1999Jun30.html
Apple Computer, Inc v. Franklin Computer Corp., 219 USPQ 113 (3d Cir. 1983).
・井上雅夫氏「プログラム関連米国判決集」による上記判決文の翻訳
http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/cr_830830Apple.htm
 
 

間違い、反論、質問、情報等がありましたら、是非メールをお願いします。

・作成 豊栖 康司  a d m i n @ t o y o s u .(dot) c o m

Copyright (C) Yasushi Toyosu, 1999-2006. All rights reserved.


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